スタインウェイは、ピアノの名前ですよね。
もう少し正確に申しますと、「スタインウェイ・アンド・サンズ」。アメリカのピアノ製造会社の名前。
「スタインウェイ」のピアノを偏愛する演奏家は少なくないようですね。俗に、
「スタインウェイ・ピアニスト」の言葉もあるんだそうですが。
もともとは、ハインリッヒ・シュタインヴェークがオルガンを作ったのにはじまるんだとか。
ドイツ人の、シュタインヴェークがはじめてピアノを造ったのは、1836年のこと。
ところが1848年に政変が起きて。1850年に、ニュウヨークに移住したのです。それで名前もアメリカ式に変えたという。
ドイツ語の「ヴェーク」 w eg には「道」の意味があるので、「スタインウェイ」に変えたと、伝えられています。
1872年に、ロシアの演奏家、アントン・ルビンシュテインが、アメリカ各地を旅したことがあるのですが。ぜんぶで、215回の演奏を行ったとのこと。
このすべての演奏会にピアノを提供したのが、ウィリアム・スタインウェイ。ルビンシュテインにともなって、列車でスタインウェイを運び、会場で調律を。
この熱意はなにもルビンシュテインのみならず、モーリツ・ローゼンタールや、イグナツィ・パデレフスキーに対しても同様だったという。スタインウェイの、自社製品への愛情を思うべし。
スタインウェイが出てくる小説に、『ズーイ』があります。1957年に、
サリンジャーが発表した物語。この中に。
「まずスタインウェイのグランド・ピアノが一台 ( いつも開けたままだった) ……………………。」
これは「グラス家」の居間の様子。
サリンジャーの『ズーイ』は、1957年『ニュウヨーカー』5月4日号に、掲載。
1955年の『フラニー』の続篇だと考えられています。
1953年に、サリンジャーは、クレア・ダグラスと出会って、戀愛。1955年2月17日に、結婚。そのためのクレアへの贈物が、『フラニー』だったのだそうですね。
同じく『ズーイ』の中に。
「ブルージーンズといやらしいスポーツコートという格好でテーブルに座っていたんだ。」
これは、「ディック」という名前の男。
スポーツコート sp ort c o at は日本でいう「替上着」に近い感じのものです。アメリカ英語であります。
イギリスでは、「スポーツ・ジャケット」でしょうか。
「身体にぴったりの、粋な、マルセル加工の、スポーツ・コート。」
1914年『クイーン』誌 7月15日号の広告頁に、そのように出てきます。
ここでの「スポーツ・コート」は、Sp orts C o at と、大文字で書きはじめられているのですが。
それはともかく、「スポーツ・コート」の比較的はやい例かと思われます。
どなたか1910年代風の、「スポーツ・コート」を再現しては頂けませんでしょうか。