ウールは、羊毛のことですよね。羊の毛から得た繊維なので、羊毛。
w o o I と書いて、「ウール」と訓むわけですね。むかしはよく「純毛」と言ったものでありますウール100%の素材が貴重だったからでしょう。
英語にもそれに似た言いまわしがあるんだとか。
「オール・ウール・アンド・ヤード・ワイド」。
これは「正真正銘の本物」の意味になるんだそうです。
ウールの繊維を顕微鏡で見ると、その表面が「鱗」に覆われているのに気づきます。この
「鱗」は湿度に反応して、開閉自在。つまり、自動換気装置が備えられているのに等しいのです。これはウールならではの特質だと言えるでしょう。
「スーツにはブラッシングを」といわれるのも、この「鱗」の機能を妨げないためでもあります。
ウールが出てくる小説に、『望郷』があります。昭和二十三年の「毎日新聞」に、連載された、大佛次郎の物語。昭和二十四年に単行本として出版されています。
「よく、そんな、厚いウールの外套を着ていらっしゃる。」
これは、「高野左衛子」が、「小野崎公平」に対しての会話として。
大佛次郎著『望郷』は、まったくの偶然から連載がはじまったものであるらしい。巻末に添えられた「あとがき」に詳しく述べられています。
もともと獅子文六が書く予定。ところが占領下の時代で。さる筋から獅子文六は注意人物だとされて。急遽、大佛次郎に白羽の矢が。
新聞小説にもいろいろ苦労があるらしく。以前、大佛次郎は、岸田國士から、ある友人を通じて忠告を受けたそうです。
「新聞小説に、文章を書いてはならない。」
大佛次郎はこの岸田國士の助言から、福澤諭吉を想ったと、「あとがき」に書いています。
明治十七年に、福澤諭吉が『時事新報』をはじめる時に言った言葉を。
「新聞の記事は、障子越しに女中に話して、伝わる内容に。」
大佛次郎はこの岸田國士の言葉をずっと頭において原稿を書いたという。
ウールが出てくる小説に、『四人の交差点』があります。フィンランドの作家、
トンミ・キンヌネンが、2014年に発表した物語。
「目の粗い毛織りの外套を着てそりを操っている男は、口数が少ない。」
主人公の産婦「マリア」が、馬橇に乗っている場面。「毛織りの」ということは、ウールでしょう。
では、「マリア」は何を着ているのか。
「そのたびにマリアは、オオカミの毛皮のコートをさっと羽織り、鞄を取って……………………。」
これは「マリア」が往診に出かけるときの様子。
「オオカミの毛皮」。ウルフのファー・コートでしょうか。
ウルフの毛皮は、毛質がやや粗く、長い。スポーティーな外套にも向く素材です。言うまでもないことですが。同じウルフでも、より寒い地方に生息していたウルフのほうが暖かいものです。
どなたかウルフの毛皮でコートを仕立てて頂けませんでしょうか。