ポンドとボタンド・ブーツ

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ポンドは、イギリスの通貨ですよね。p o und と書いて「ポンド」と訓むわけですね。
正しくは、「スターリング・ポンド」。
それというにも、ただ「ポンド」 p o und だと重さポンドと混同しなくもありませんから。
封度とか、£として表記されることもあります。おおよそ日本円の200円前後でしょう。私ごとではありますが。1970年代に、はじめてイギリスに旅した時には、一ポンドを700円で換算していた記憶があります。余談ですが。その時代のフランスの一フランは、70円くらいだったのではないでしょうか。
ポンドの話が出てくる回想録に、『回想十年』があります。吉田 茂が昭和三十二年に発表した回想記。この中に。

「………日本政府はイギリスの外貨事情の非常に惡かったときに、二千萬ポンドをイングランド銀行に預けてくれた。」

これは戦後、吉田 茂が英国を訪問した時の話。イーデン首相の時代で、時のバトラー大蔵大臣のスピーチの一節として。
このバトラー大蔵大臣のひと言で、会議の気分が柔らかくなったと、吉田 茂は書いています。
ポンドが出てくる有名な戯曲なら、『ヴェニスの商人』でしょうか。もっともこの場合の「ポンド」は、重さのポンドなのですが。
かのシェイクスピアが、1598年に発表した演劇。シェイクスピアが『ヴェニスの商人』を書きはじめたのは、1596年頃のことだろうと、考えられています。が、詳しいことは分かっていません。
ただ、1598年7月22日に、『ヴェニスの商人』の出版登録がなされているのは、事実のようです。
『ヴェニスの商人』の初演は、1600年のことであるらしい。

さあ、肉を切りとる用意をするがいい、ただし
血を流してはならんぞ。また、切りとる肉は
正確に一ポンド、それ以上でも以下でもいけない。

裁きの名場面であります。
「アントーニオ」はヴェニスの商人。貿易のためにシャイロックから融資を受ける。でも、船が沈んだので、返済ができない。担保はアントーニオの「肉一ポンド」。
シェイクスピアにもなにかの参考はあったのでしょうが。演劇の展開として美事な進行には、舌を巻いてしまいます。
通貨の「ポンド」が出てくる小説に、『スコット・キングの現代ヨーロッパ』があります。
英国の作家、イーヴリン・ウォオが、1943年に発表した物語。日本語訳は、吉田健一。

「併しここに七十ポンドあるじゃありませんか。

これは物語の主人公、「スコット・キング」の所持金のこと。ある国に旅をしての、ホテル代として。
また、『スコット・キングの現代ヨーロッパ』には、こんな描写も出てきます。

「彼等は黒に近い服に固いカラを着け、黒いネクタイ、ボタンで止める黒い靴で長い鼈甲の吸い口で煙草を吸い……………………。」

これはある国のホテルのロビイに集まってきた男たちの様子。
おそらくは、古典的な「ボタンド・ブーツ」を履いているのでしょう。
十九世紀の紐結び靴は略式で、ボタン留め靴が正式とされたことに由来しているのです。
どなたか完璧なボタンド・ブーツを作って頂けませんでしょうか。

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