プディングとブリーフ・ケイス

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プディングは、美味しい食べ物ですよね。なぜかイギリスふうの印象があります。
事実、イギリスには、「プディング・レーン」の地名があって。もちろん、
p udd ing l ane と書いて、「プディング・レーン」と訓みます。
このプディング・レーンの地名は、1402年頃に遡るそうですから、古い。
さらには、「プディング」の英語は、1287年頃からだと言われていますから、英國と
プディングの因縁も浅からぬものがあるのでしょう。
でも、なぜ、「プディング」なのか。これはフランス語の「ブーダン」b o ud in と関係があるらしい。あの「血のソーセージ」と。つまり牛や豚の内臓を意味する言葉だったらしい。当時、このあたりに屠殺場があったので、「プディング・レーン」の名前がついたのでしょう。
イギリスでのプディングは、古代ロオマが遠征してきた時に、「ブラック・ソーセージ」を伝えた。それが後に、「プディング」なったとの説があります。
1666年。このプディング・レーンに、「トオマス・ファリナー」というパン屋があって。ここから出た火が、あの「ロンドン大火」の火元だったという。
英語の「プディング・タイム」には、「正餐」の意味があるんだそうですね。昔のイギリスでは正餐のはじめに必ずプディングが出るきまりがあったらしいので。
イギリスのプディングが出てくる随筆に、『パイプのけむり』があります。言わずと知れた
團伊玖磨の名文。

「……………早速にヨークシャー・プディング、キャベジ、焼き馬鈴薯、ロール・パン付きのロースト・ビーフを註文した。」

そんなふうに書いています。ロンドンの名店「シンプソンズ」で。
「シンプソンズ」は、1848年の創業だと伝えられています。仕出し屋だった、ジョン・シンプソンによって。開店頃はごくふつうのレストランだったという。
その後、当時有名だった料理人、アレックスソイヤーが、客の前で切り分けることを提案。これによってたちまち人気店になったと伝えられています。
團伊玖磨の『ロースト・ビーフ』を読んでいますと。「イチボ」の語源が出てきます。
團伊玖磨の「イチボ」の説明は。「エイチ・ボーン」H-b o n eから。つまり牛の尻の「H」型の骨の近くの肉なので、「エイチ・ボーン」。これを耳で聞いた日本人が、「イチボ」と。なるほど、さもありなん。
團伊玖磨の『パイプのけむり』を読んでいますと。

「僕は指揮棒と楽譜を入れたブリーフ・ケースを下げて家のある造成地から下の県道に下りて行った。」

1970年代の團伊玖磨は、ブリーフ・ケイスを愛用していたものと思われます。
br i ef c as e は、「書類鞄」のことですね。
ブリーフ・ケイスの前には「ブリーフ・バッグ」の言い方があったらしい。これは弁護士の持つ書類鞄のこと。
「ブリーフ」にはもともと、「ほんのちょっとした」の意味があるんだとか。
ここにもなにか英国的な匂いを感じるのですが。少なくとも「重要書類」を入れるためものではありませんよ、と。
イギリス人はなんでもかんでも、万事控え目に言うのが、お好き。「いやあ、ちょっとした紙切れでね」。それで、ブリーフ・ケイス。
どなたか控え目でそれでいて実は豪奢にブリーフ・ケイスを作って頂けませんでしょうか。

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