Oとオーデコロン

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Oは、Aから数えて、15番目のアルファベットですよね。
Nの次、Pの前ということになります。
Oは、おしゃれ語とも関係がないわけでもなくて。たとえば、「タモシャンター」
t am-O’-Sh ant er は、スコットランドの民族帽のこと。もともとは「シャンター村のタム」の意味なのです。
スコットランドでの「O」は、英語の「of」に近いんだそうですね。
これがアイルランドに行きますと、「息子」の意味に。ひとつの例ですが、ユージン・オニール。オニールは、O‘N e il と書きます。そもそもは「ニール家の息子」の意味があったという。アイルランドの人に、「O’」ではじまる姓が多いのは、そのためなんだそうですね。
その意味ではスコットランドの「マック」とよく似ているのでしょう。
Oと小説との関係ということなら。『O嬢の物語』があります。
『O嬢の物語』は、1954年にパリで出版されています。著者は、ポーリーヌ・レアージュとなっています。
『O嬢の物語』は堂々たる性文学であります。1950年代に女性が性文学を書いたというので、話題となったものです。が、「ポーリーヌ・レアージュ」は筆名。本名ではありませんでした。
そこで、「誰が書いたのか?」と、筆者探しがはじまって。たしかに筆者探しがしたくなるほどの前衛的内容でもありましたから。
『O嬢の物語』には、長文の序文が添えられています。この序文を書いたのが、ジャン・ポーラン。ジャン・ポーランはフランスの作家。そこで、ジャン・ポーランこそが、真の作者ではないか、との噂もあったらしい。その後、結局は「誰が書いたのか?」は謎のままになるのですが。
「O嬢」は物語の女主人公。「O嬢」がいろんな冒険に出会う物語になっています。

「彼女はふだんのままの服装をしていた。ハイヒールの靴、襞のあるスカートのスーツ、絹のブラウス、帽子はかぶっていない。しかし、スーツの袖までかぶる長い手袋をはめ、革のハンドバッグには、紙やお白粉や口紅をいれていた。」

澁澤龍彦訳ではそのようになっています。ここに「彼女」とあるのが、「O嬢」であるのは、いうまでもないでしょう。
なお、「O嬢」は、女流のファッション写真家という設定になっています。

ところが。1995年になって。ざっと四十年ぶりに作者の真相が明らかに。フランスの作家、ドミニック・オーリイが、「私が書きました」と。
1950年代。ドミニック・オーリイと、ジャン・ポーランとは戀人同士で。ジャンはドミニックに言った。
「女には性文学は書けない」。これに対してドミニックは、このように答えた。
「いいえ。そんなことはありません。女にだって性文学はかけます!」
まあ、売り言葉に対する買い言葉でもあったのでしょう。そして、その結果として生まれたのが、『O嬢の物語』なのですね。
ふつう話はここで終わるのでしょう。が、続きがないわけでもなくて。
『O嬢の物語』を翻訳したのは、矢川澄子である。そんな噂が出たことがあるのです。
矢川澄子は、日本の詩人で作家。一時期、澁澤龍彦の妻でもあった人物。
まあ、前衛作であればあるほど、「噂」が多くなるの仕方ないことかも知れませんが。

Oが出てくるミステリに、『二千万ドルと鰯一匹』があります。1971年に、フランスの女流作家、カトリーヌ・アルレーが発表した物語。カトリーヌ・アルレーは、「悪女」を書かせては天下一品で、『二千万ドルと鰯一匹』にも、ちゃんと悪女が登場します。

「これ、カルダンの新しいオーデコロンなのよ。パリから直接送らせたの。化粧台の中に入れておきますからね。」

これは、「イリーナ・レグファーター」の科白として。
世界的に眺めても、フランスはオーデコロン先進国と言って良いでしょう。オーデコロンはひとつには、食事と関係があります。香りの濃い食事が多いと、やはりオーデコロンが必要になってくるでしょう。
そしてもうひとつには、風呂の習慣。今はさておき。ひと時代前のフランス人は、日本人に較べて、それほど頻繁に風呂をつかうことはなかったのです。
つまり、フランスはいろんな条件のなかで、オーデコロンが発達するようになっていたのでしょう。
そして、また。香水とオーデコロンは、本来まったく別の物だったのです。香水はれっきとしたおしゃれ用。オーデコロンはもともと消毒剤だったのです。つまりアルコール消毒剤に多少の香料を加えたもの。ですから、ふだんから、じゃぶじゃぶと使って平家だったのであります。
どなたか消毒剤としてのオーデコロンを作って頂けませんでしょうか。

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