キッドとキュロット

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キッドは、子山羊のことですよね。でも、子山羊からの連想で、「子ども」の意味にもなります。
たとえば、『東京キッド』だとか。

🎶 歌も楽しいや 東京キッド……………。

『東京キッド』は、昭和二十五年に、美空ひばりが歌ってヒットした歌です。

「そのころ、新曲の『東京キッド』(藤原洸作詞・満場目正作曲)が発売され、ハワイロケを含む同名の映画も好評でした。」

美空ひばり著『ひばり自伝』に、そのように書いてあります。

昭和二十五年五月十六日。美空ひばり一行は羽田空港を発って、ハワイに向って。同じ日の朝、ホノルル空港に着いています。ハワイ公演のために。共演者はその頃絶大な人気のあった、川田晴久。

🎶 地球の上に朝が来る……………。

そんな川田晴久の歌は、一世風靡したものであります。
美空ひばりは、ハワイからハリウッドにも生き、ボブ・ホープにも会っています。7月12日のことです。

えーと。キッド、子山羊革の話に戻ると致しましょう。

「小野さんは兩肘を鐡の手擦に後から持たして、山羊仔の靴を心持前へ出した。」

夏目漱石が、明治四十年に発表した『虞美人草』に、そのような一節が出てきます。
夏目漱石は、「八木仔」と書いて、「きつど」のルビを添えているのですが。

「小助は苦笑した。するとキッドの手袋を穿めた、うねうねとした長い腕が彼の口の端を軽く突いた。」

大正十四年に、今 東光が書いた『痩せた花嫁』に、そんな文章が出てきます。
キッドは薄く、伸縮性があって、上質の手袋には最適の素材でしょう。

キッドが出てくる紀行文に、『ブルターニュ紀行』があります。フランスのフロベールが、1847年に、ざっと三ヶ月ブルターニュを旅した時の記録なのです。この中に。

「………黒紐で踝のまわりに結わえつけられた山羊革の小さい靴に擦れていた。」

これは旅で会った少女の履いている靴について。
また、『ブルターニュ紀行』には、こんな表現も出てきます。

「………仮装舞踏会ではく短袴を思わせる、ピンクと青の帯状の縞のある陶器のやつだ……………。」

日本語訳者、渡辺 仁は、「短袴」と書いて、「キュロット」のルビを添えています。とある宿で出されたグラスのことなのです。
フロベールの時代には、仮面舞踏会ではキュロットを穿くことがあったのでしょう。
キュロット c ul ott e は、脚にフィットした絹の半ズボン。ふつう、礼装用とされます。
どなたか現代版のキュロットを仕立てて頂けませんでしょうか。

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