スケッチとスコッチ

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スケッチは、素描のことですよね。手早く下絵を描くことでしょう。

「………山羊髯を生やした細面の父の顔をいたづらにスケッチして………」

夏目漱石が、1916年に、発表した『明暗』に、そのような文章が出てきます。明治の頃、すでに「スケッチ」の言葉が使われていたのでしょう。
これは物語の上の「津田」の様子ですが、ここから想像するに、漱石もまた、スケッチをすることがあったものと思われます。

「居酒屋ボアーズヘッドの扉の前で、宴に列した人たち全員がテーブルを囲んで和気あいあいと………」

アメリカ人の作家、ワシントン・アーヴィングが、1819年に、発表した『スケッチ・ブック』の一節に、そんな文章が出てきます。
ここでの「ボアーズヘッド」は、当時有名だったロンドンのパブの名前。
1819年から1890年にかけて出版された『スケッチ・ブック』は、当時、大歓迎されたとのことです。興味深く、読みごたえある紀行文とでもいえばよいでしょうか。
『スケッチ・ブック』の題名もよかったものと思われます。

「スケッチ・ブックらしいものを手にしながら、ぶらぶらしているのを私たちは認めた。」

1934年に、堀 辰雄が書いた『美しい村』にも、スケッチ・ブックが出てきます。これはその時代の軽井沢での光景として。
スケッチ・ブックが出てくる小説に、『レベッカ』があります。1938年に、デュ・モーリアが発表した長篇。

「三時ごろになったら、スケッチ・ブックを持って、わたしはそこへ行くつもりだった。」

「そこ」とは、モナコのとある四つ辻のこと。
また、『レベッカ』には、こんな描写も出てきます。

「もし彼に現在着ているイギリス仕立てのスコッチ織りの背広をぬがせて………」

ここでの「彼」は、「デ・ウインター」という人物。「スコッチ織り」とあるのですから、トゥイードなのでしょう。少なくとも、スコッチ・ウイスキイではありません。
どなたかスコッチ織りの背広を仕立てて頂けませんでしょうか。

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