ボートは、船のことですよね。boat と書いて、「ボート」と訓みます。
「ボーター」boater が「カンカン帽」の意味になるのは、ご存じの通り。また、「ボーティング・ブレイザー」は、ダブル前ブレイザーの別名にもなります。
ひと言「ボート」と聞いただけで、笑いはじめる人もいるでしょう。
『ボートの三人男』を想い出して。『ボートの三人男』は、ユウモア小説。1889年9月に出版されて、今なお人気のある物語なのです。作者は英国の、ジェローム・K・ジェローム。名前と苗字とが共に、「ジェローム」。お父さんもまた、同じ名前だったそうですが。
ところでミドル・ネイムの「K」は何なのか。「クラプカ」。
ジェローム・K・ジェロームは、1859年5月2日。イングランド中部に生まれています。
1870年代のジェロームは、役者の経験もしているんだとか。ひと通りの苦労をもしているみたいですね。1880年代からは、雑文業に。
そして、1889年の『ボートの三人男』が出版されて、好評、大好評。
1890年のテムズ川のボートの登録台数、1,5倍に殖えたそうですから。
とにかく『ボートの三人男』は、抱腹絶倒の讀物であること、間違いありません。
そして、もうひとつ。1888年頃の、英国のブレイザー事情を識る上での貴重な資料でもあるのです。もし、ブレイザーについて語るなら、一度は『ボートの三人男』に目を通しておきたいものです。
「ハリスと僕がジョージの服装に異を唱えるのは、そんな服を着た人間が乗っているとボートが目立って仕方がないからだ。」
これは友人たちの、ジョージのブレイザーへの評論として。ジョージのブレイザーのどこが問題なのか、ジェロームは詳しく書いてもいるのですが。
ボートが出てくる小説に、『九十三年』があります。1873年に、フランスの作家、ヴィクトル・ユゴーが書いた物語。
「乗組員はみな、この艦が何かなみなみならぬ任務をもっているのだろうと想像していた。」
これは英国の戦艦「クレイモア」について。『九十三年』の題名は、1793年を意味しているのですが。
「上着の表側はなめして絹の飾り紐がついていたが、裏側は粗毛のままになっている。申し分のないブルターニュ地方の農民のいでたちだった。」
これは雌山羊の革で仕立てたジャケットについての説明として。
また、『九十三年』にはこんな描写も出てきます。
「あたしたち赤帽をかぶると、きれいに見えるの。」
これはあるパリ市民の声として。ここでの「赤帽」は、「ボネ・ルージュ」のこと。フランス革命期の市民帽ともされたものです。男も女もかぶったものです。
どなたか現代にふさわしいボネ・ルージュを作って頂けませんでしょうか。