カーキ色は、国防色のことですよね。もっとも今は国防色よりもカーキ色の方が一般的でしょうが。
戦前の日本では、逆。カーキ色はあまり用いられなくて、国防色の方が多く使われたんだそうですね。
イギリスでの「カーキ」khaki は、1850年頃からのことなんだとか。これはペルシャ語の「カーク」khākと関係があるらしい。それは「埃」の意味だったらしい。
埃色であるかどうかはさておき、汚れの目立ちにくい色であることは、間違いないでしょう。
「カアキイ色の軍服に大きい勲章を附けてゐるのは好いが、人力車の跡に附かうとして………」
これはある会場での交通整理の様子として。森 鷗外が、明治四十三年に発表した短篇『ル・パルナス・アンビユラン』に、そのような一節が出てきます。。
森 鷗外の『ル・パルナス・アンビユラン』には何度も「シルクハット」の言葉が出てきます。私が数えたところでは、三十回。ひとつの短篇に三十の「シルクハット」は、決して少なくはないでしょう。
「簑をとると同じようにカーキ色の詰襟を着てゲートルを捲いている。」
宇野千代が、昭和十年に発表した小説『色ざんげ』に、そのような文章が出てきます。これは村の青年団の服装として。
カーキ色が出てくる小説に、『風知草』があります。1945年に、宮本百合子が書いた物語。
「………黙つたまま眼にちからを入れた表情で、カーキ色の国防服めいたものを着てゐる………」
これはある会合に集まった人の様子として。
また、『風知草』には、こんな描写も出てきます。
「ぶらぶらしてはまらないカフス・ボタンの袖口をつき出した。」
これは夫の「重吉」が、妻の「ひろ子」に対して。
重吉は自分のシャツの袖口が留められないので、妻に手伝ってもらう場面。
うーん、そういう事もあるんでしょうね。『風知草』では、袖口のボタン穴が小さいために。
どなたかカフス・ボタンを留めやすいシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。