カレンダーとガーゼ

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カレンダーは、暦のことですよね。昔は「日めくり」などといって、小型の暦が柱などに掛けてあったものです。
暦をめくって、その日が大安吉日がどうかを知ったのであります。今はあまり吉日などは気にしないで、まずは曜日の確認でしょうか。月曜日なのか、日曜日なのか。でも、なかには「月月金金」を日々の暦にしている人もいるのかも知れませんが。
でも、いずれにしても今の私たちが暦によって暮していることは間違いないでしょう。

森 鷗外が『日記』をつけていたことは、広く識られているところでしょう。
松本清張の名作『或る「小倉日記」伝』があるのも、森 鷗外の『日記』があってこその小説なのですから。

「風。大森の梅開くと聞く。」

明治三十一年二月二日(水)の『日記』に、鷗外はそのように書いています。この日の『日記』の記述はこれのみ。
これはほんの一例ですが、鷗外の『日記』には、花の話が多く出てきます。

「桐、藤の花開く。」

これは明治三十一年五月十日(火)の日記のすべて。

「夕方より風。卯花開く。」

これは同じ年の五月十四日(土)の日記。

「やくるま草開く。」

五月二十三日(月)の『日記』に。

「小櫻草開く。」

五月二十四日(火)の『日記』に。
少なくとも若き日の森 鷗外が「花々」に深い関心があったのは間違いないでしょう。
森 鷗外が留学したのは、ドイツ。
1971年にイギリスに留学した日本人に、マークス寿子がいます。

「………断乎として目立たない色のスーツとタイを選んで、男は着るものじゃない、内容で勝負すると構えて見せるか、どちらかになるであろう。」

マークス寿子著『イギリス 気ままカレンダー』に、そのように出ています。
マークス寿子の説によりますと。英国には、伝統的に「禁欲主義」があるのだと。可能な限り自分の欲望を抑えるのが、美学なのだ、と。
禁欲なのか、時代なのか、難しいところですね。

カレンダーが出てくる小説に、『魔の山』があります。ドイツの作家、トオマス・マンが発表した長篇。

「ハンス・カストルプはこんどの旅にカレンダーを持ってきていなかったので、日をいつも正確にわきまえていることができなかった。」

『魔の山』の背景はスイスの高原におかれているのですが。スイス高原のサナトリウムに。
また、『魔の山』には、こんな描写も出てきます。

「白いガーゼの包帯をも、よく似合う装飾のように巻いていた。」

これは「シュール夫人」の様子として。サナトリウムにガーゼが出てくるのは、不思議ではないでしょう。

「ガーゼ」gaze は、もともとドイツ語。英語では、「ゴーズ」gauze 。
その昔、パレスチナの「ガザ」Gaza で生まれた生地なので、その名前があります。そもそもは、絹織物だったという。
どなたか絹のガーゼで上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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