グラスは、ガラスのコップのことですよね。なにか液体を飲む時、グラスがあると便利でしょう。
グラスが複数形になりますと、「眼鏡」の意味にも。「グラシーズ」というではありませんか。
ガラスの靴がぴったり合ったのが、シンデレラ。あまりにもよく識られた物語なのですが。「シンデレラ」は古い話で、何度も翻訳されています。
もともとの原文では「リスの革の上靴」だったという。
「パントフール・ド・ ヴェール」pantoufle de vair 。この「ヴェール」が、「ヴェール」verre
と誤訳されて、「ガラスの靴」になったんだそうですね。まあ、「ガラスの靴」の方が夢がありますが。
「夕食後に、毎夜寝る前の習慣で、コニャックのグラスを置き、ぽつねんとひとりで味わっていた。この琥珀色した酒が、いつも恭吾の孤独を慰めてくれる。」
大佛次郎が、昭和二十三年に発表した小説『帰郷』に、そのような一節が出てきます。場所は、箱根強羅の宿で。
たぶんバルーン・グラスでコニャックを傾けていたのでしょう。
グラスが出てくる小説に、『007 白紙委任状』があります。ジェフリー・ディーヴァーが、2011年に発表した「007物」です。
「フィリーがワインのグラスを傾ける。ボンドの目は、その信じがたいほど美しい横顔の輪郭をなぞった。」
たしかに美人がワイン・グラスを持つ様子は美しいものですよね。
また、『007 白紙委任状』には、こんな描写も出てきます。
「カナーリの紺のスーツ、海島綿の白シャツ、バーガンディ色のグレナディン地のネクタイ。シャツとネクタイは、ターンブル&アッサーのもの。」
これは朝、7時15分に、ボンドが支度している場面。
「グレナディン」
grenadineは旧式の、凝りに凝ったネクタイ地。本来は綾織なのですが、それが崩れて複雑な繻子のようにも見える生地。質感豊かで、今日のネクタイ地としては最上のものでしょう。
どなたかグレナディンのネクタイを作って頂けませんでしょうか。