簪と角袖外套

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簪は、日本ならではの髪飾りですよね。髪飾りはもちろん、西洋にもあります。今ならバレッタでしょうか。
簪は、「髪挿し」から出た言葉だと考えられています。
簪の流行は、江戸、元禄期からのようですね。
浮世絵師、菱川師宣の代表作に、『見返り美人』があります。ここに描かれている簪こそ、比較的はやい例なんだそうです。
今、改めて『見返り美人』を観てみますと。半ば後姿ですから、髪の後がよく描かれています。まず髪の頂上近くに、白いリボンのようなものが見えていて。たぶん「元結」かと思われます。その元結の下に、たしかに簪が描かれているのです。
菱川師宣の『見返り美人』は、浮世絵の代表作であるだけでなく、簪の歴史をも語っているのでしょう。

「奥さまのおぐしにかきつき、かんざし・こまくらおとせば、五年の恋、興覚まし」

井原西鶴の『好色一代女』に、そのような文章が出てきます。ここでの「こまくら」は、当時の「小枕」のこと。女が髪を結う時、下地に入れる当布のことなんだそうです。
それはともかく元禄時代には、簪が流行っていたことが窺えるに違いありません。
簪が出てくる小説に、『たけくらべ』があります。明治二十九年に、樋口一葉が発表した物語。明治二十九年は、一葉が二十五歳の時。実際には、一葉は二十四で、『たけくらべ』を仕上げているのですが。

「霜月の酉には論なく門前の明地に簪の店を開き、御新造に手拭かぶらせて縁喜の宜いのをと呼ばせる趣向」

樋口一葉の『たけくらべ』を読んでおりますと。

「己らだつて最少し経てば大人になるのだ、蒲田屋の旦那のやうに角袖外套か何か着てね」

これは「信」の科白として。
当時、「角袖外套」が少年の憧れだったこととが分るでしょう。
角袖外套は、和装外套。着物の上に重ねるコート!着物の袂のために、袖を四角に裁っているので、「角袖外套」。
どなたか今ふうの角袖外套を仕立てて頂けませんでしょうか。

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