パレットとパンタロン・レイエ

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

パレットは、「平たい台」のことですよね。palete と書いて「パレット」と訓みます。古代英語では、paletteと書いたとのことです。
とにかく平たい台ですから、荷物を運ぶ時の台もまた、「パレット」と呼ぶことがあります。さらには時計の部品にも「パレット」と称する小板があるんだそうですね。
あるいはまた、画家の使うパレット。絵具を調合する盤のこと。キャンバスと筆と、パレットがないことには絵が描けないでしょう。

「描く男は丸い脊をぐるりと返して、調色板を持つた儘、三四郎に向つた。」

夏目漱石が、明治四十一年に発表した小説『三四郎』に、そのような一節が出てきます。これは三四郎が絵師の「原口」を訪ねる場面。「美弥子」が絵のモデルになっているので。
夏目漱石は「調色板」と書いて「パレツト」のルビを添えています。たしかに色を調合する板でもあるでしょうら。

「パレツトを動かしてゐる彼女と、それから彼女の横からその畫布を覗き込みながら、一人のベレ帽をかぶつた若い男が、何やら彼女に話しかけてゐるのを認めた。」

昭和八年に、堀
辰雄が発表した小説『美しい村』に、そのような文章が出てきます。ここでの「美しい村」が当時の軽井沢であるのは、言うまでもないでしょう。事実、堀
辰雄は1933年に、軽井沢に滞在してもいます。また、軽井沢での堀 辰雄はベレエを愛用していたそうですが。

パレットが出てくる小説に、『アミナダブ』があります。1942年に、フランスの作家、モーリス・ブランショが発表した物語。

「ある綱にはいろいろな大きさのパレットがいくつも吊してあり、それぞれに、絵具の分厚い層をいくつも重ねたなかに、綿密にまた気持よく描いたなにかの形象の断片を見せていた。」

これは主人公の「トマ」が画室を眺めている場面。
また、『アミナダブ』には、こんな描写も出てきます。

「黒のモーニング、グレイの縞ズボン、白いワイシャツ………」

夜明けの街で「トマ」に話しかけてきた男の様子として。
モーニング・コートには縞ズボンということになっています。フランスなら、「パンタロン・レイエ」pantlon rayè でしょうか。
どなたか縞ズボンの生地でスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone