おやつは、お三時のことですよね。ちょっと甘いものを口に入れて、ちょっと渋いお茶を飲む。愉しいひとときのことであります。
江戸時代のはじめ、日本人は朝と夜に二回の食事だったという。でも、それでは途中で空腹になるので、今の三時頃に少し食べた。これが「おやつ」のはじまりなんだそうですね。その時代の「八つ」が、今の三時頃だったので。
京都では「東本願寺さん」が、太鼓で「八つ」を報せた。そこで東本願寺に対する尊敬として、「お八つ」と言ったんだそうです。
さて、おやつに何を頂きましょう。ひとくちパイだとか。アップルパイだとか、レモンパイだとか、いろんな種類のパイがあります。
パイは、十七世紀のフランスで生まれたんだそうです。菓子職人の、クロード・ジュレによって。ある時、クロード・ジュレは生地の中にバターを練り込むのを忘れて。後から生地でバターを包むようにして、焼いた。これが、なんと、さくさくしてとても美味しかった。
これが今のパイのはじまりとの説があります。失敗は成功のもとのひとつの例なんでしょうか。
おやつが出てくる小説に『愛の砂漠』があります。フランスの作家、フランソワ・モーリャックが、1925年に発表した物語。
「レイモンはおやつを食べてないとい言い、クロワッサンとアーモンド・パイを買う」
うーん、クロワッサンはおやつでもあるんですね。
また、『愛の砂漠』には、こんな会話も出てきます。
「 ー シルク・ハットにフロック・コートですか?」
これは夫が外出する時の妻の科白として。
シルク・ハット。フランスなら「オードフォルム」でしょうか。直訳すれば、「高い形」。たしかにシルク・ハットは「高い形」ですからね。
どなたか1920年代の、オードフォルムを再現して頂けませんでしょうか。