葡萄酒とブレテル

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葡萄酒は、ワインのことですよね。フランスで言うところの「ヴァン」であります。昔、福島慶子の随筆集に、『ヴァンは酒ならず』というのがあった記憶があるのですが。ヴァンを水割にすると、食事の時、子供にも飲ませる。たしかそんな話が出ていたように、覚えています。
子供の頃には皆「葡萄酒」と言ったものです。ほとんど唯一の例外は「赤玉ポートワイン」ではなかったでしょうか。
葡萄酒と書いて「ぶどうしゅ」。これよりも古い言い方が、「ぶどうざけ」。江戸の頃には多く「ぶどうざけ」と呼んだんだそうですね。ただし、白ワインのことを。
赤ワインは、「ちんた」と言ったそうですね。時には、「珍陀」の宛字もあったらしい。これはオランダ語の「ヴィーノ・ティント」から、「ちんた」の言葉になったんだとか。

「西洋調味の珍菓に滋養となるべき極上の舶来葡萄酒三壜と………」

明治二十年に、服部誠一が発表した小説『稚児櫻』に、そのような一節が出てきます。明治の時代には、「葡萄酒」が一般的だったことが、窺えるでしょう。

葡萄酒が出てくる小説に『嘔吐』があります。1938年に、フランスの作家、サルトルが発表した物語。

「太陽の光は明るくて透明だ。度の弱い白葡萄酒である。」

これはある日曜日に、主人公が巴里を散歩している様子として。当時の巴里の名店なども実名で出てきて、興味深いものがあります。
また、『嘔吐』には、こんな描写も出てきます。

「ズボン吊りは青いワイシャツの上で、やっと見わけられる程度である。」

これはあるカフェの「アドルフ」という男の薄紫色のズボン吊り。サルトルはここから延々とそのズボン吊りについて語るのです。
ズボン吊り。フランスなら、「ブレテル」bretelle でしょうか。もちろん、ブレイシーズのことであります。
パンタロンをより美しく穿くにはやはりブレテルが必要です。
どなたかサルトルに語ってもらえるブレテルを作って頂けませんでしょうか。

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