スペインとストライプス

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スペインは、ヴィーノの都ですよね。ワインが美味しい国です。
ワインが美味しいということは、また、美食の都でもあります。パエリャをはじめとして、スペインには美味しいものがたくさんありますから。
スペインの古いジョークに、『ヴィーノ』があります。
ある左官屋がビルの三階で仕事をしていて。誤って下に落ちた。驚いた隣のカミさんが水を持って、駆けつけた。その時の左官屋のひと言。
「ところで何階から落ちたらヴィーノを持って来て下さるんです? 」

まあ、それくらいスペインのワインは美味しいということなのでしょう。

「マンサニーリャを飲めば、順風を受けた帆のように爽やかに、漂う気分になる。」

1929年にスペインを旅した作家のカレル・チャペックは、『スペイン旅行記』の中に、そのように書いています。ここでの「マンサニーリャ」がスペイン・ワインであることは、言うまでもないでしょう。

「スペインの葡萄酒「リオハ」の杯を傾ければ、陶然として南欧の気分に酔ってしまう。」

昭和二年にスペインを旅した考古学者の、浜田博士は『西班牙の旅』に、そのように書いています。
これはマドリッドのヘラドース広場に面した「バチン」というレストランでのことなのですが。
昭和十四年にスペインを旅した作家に、野上弥栄子がいます。その時の紀行文が、『スペイン日記』なのです。『スペイン日記』には、当然のようにスペイン料理の話が出てきます。

「アロス。バレンシア。鶏のぶつぎりを御飯に炊きこんだもの。チピロネス。いかの墨煮。足のほかハムなど細かく切って油でいため、烏賊の袋に米とともに詰めて煮こんだものを拵える。」

また、牛乳が一リットルで、「八十文」だとか。女中の月給が五十ペセタなどとも出ています。

「セゴビヤ料理もマドリッドで結構食へる。パエチャと云ぶ米の飯に小さな貝を殻ごと野菜や子海老等とまぜて汁で煮た特有のものである。」

画家の堂本印象は、『マドリッド』と題する紀行文に、そのように書いています。堂本印象は昭和二十七年に、マドリッドを旅していますので。

1865年にスペインを旅した画家に、マネがいます。もちろん、フランスのエドゥアール・マネであります。マネが三十三歳の時に。

「スペインでぼくを最高によろこばせたのはベラスケスだ。」

マネは同じ年の九月に、そのような手紙を友人に送っています。
マネが1868年に描いた絵に、『エミール・ゾラの肖像』があります。ゾラが書斎で本を開いている様子が描かれています。
エミール・ゾラは当時の習慣に従って、ストライプスのあるパンタロンを穿いています。
「ストライプス」は、ズボンの「側章」。
十九世紀の人にとって、ズボンの外縫目は下品だったのです。そこでいろんな方法で、外縫目を隠した。そのひとつが、「側章」であり「ストライプス」だったのです。
どなたかストライプスの美しいパンタロンを仕立てて頂けませんでしょうか。

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