大工は、カーペンターのことですよね。
家を建ててくれる人のこと。
「カーペンター・パンツ」というではありませんか。
もともとは大工さんが穿くものだったのでしょう。
家を建ててくれる人が、大工。神社などを建てるのが、宮大工。大工の頭が、棟梁ということになっています。
大工。昔は「おおたくみ」と訓んだという。
たしかに一軒の家を建てるのは、おおたくみのことですから。
大工が主人公となる名作に、『五重塔』があるのは、言うまでもないでしょう。
幸田露伴が、明治二十五年に発表した小説。
「大工の十兵衛と申しまする、御普請につきまして御頼に出ました、とおづおづいふ風態の何となく腑に落ちねど、」
幸田露伴の『五重塔』は、こんなふうに幕を開けます。
この十兵衛が、「感応寺」の五重塔を建てる物語であるのは、言うまでもありません。
十兵衛は名人気質の大工。絶対の自信を持って、五重塔を。
ある時、記録的台風で。皆が建ったばかりの五重塔を心配して。
でも、五重塔はびくともしなかった。そんな内容になっています。
何度読んでも感動の涙があふれて仕方がありません。
小説の題に大工と付くものに、『大工らよ、屋根の梁を高く上げよ』があります。
1955年に、アメリカの作家、サリンジャーが発表した物語。
ただし大工が主人公となる小説ではありませんが。
サリンジャーが1957年に書いた短篇に、『ズーイ』があるのは、ご存じの通り。
1957年「ニュウヨーカー」5月4日号に掲載された物語。
これはそれ以前の『フラニー』の続篇でもあるのですが。
サリンジャーの『ズーイ』を読んでおりますと。
「彼女は濃紺の、両前の上着を着て、アルルにあるヴァン・ゴッホのベッドの赤い毛布とほぼ同じ色合いのタモシャンター・ベレーをかぶっていた。」
「タモシャンター」tamoshanter は、詩から生まれた言葉。
スコットランドの詩人、ロバート・バーンズの詩から。
もともとは、「シャンター村のタモ」がかぶっていた帽子のことそれは、スコットランドの民族帽でもあったのですが。
どなたか名工が作ったようなタモシャンターを仕上げて頂けませんでしょうか。