モオムとモーニング

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モオムは、イギリスの作家ですよね。ウイリアム・サマセット・モオム。でも、ご本人はウイリアムの名前があまりお好きではなくて。たいていは、「サマセット・モオム」で通した人物でもあります。
イギリスには秘密諜報部員から、後に小説家になったお方も少なくありません。ひとつの例を挙げるなら、ジョン・ル・カレ。ジョン・ル・カレは、秘密諜報部員時代から、スパイ小説を書きはじめています。ために実名では具合が悪いので、「ジョン・ル・カレ」の筆名を使ったのです。
ところがモオムの場合は、小説家から秘密諜報部員になった人物なのです。これはモオムの、『アシェンデン』を読むと、理解されることでしょう。
サマセット・モオムは、あまりにも文章が上手すぎた人。当時の文壇でのモオムの評価は、「大衆作家」という感じがあったものです。日本でもそうですが、なにが「純文学」であるのかは、定めがたいところがあります。が、モオムの場合はその小説が売れに売れたので、「大衆文学」だと。
ほんとうは、そうではありません。モオムの小説の質は、まことに高い。でも、理解されやすい名文。だから、「大衆文学」と決めつけられた。
この辺りの事情は、モオムの『コスモポリタンズ』に目を通すと、すぐに分かるでしょう。モオムがお好きなお方に、曽野綾子がいます。

「若い時から、私は『会堂守り』というモームの短編が好きでたまらなかった。」

曽野綾子著『幸福不感症』に、そのように書いています。『会堂守り』もまた、『コスモポリタンズ』に収められている名品なのです。
曽野綾子著『幸福不感症』には、こんな一節もあります。

「教師も生徒も、毎日礼服 ( モーニング ) を着て学校に通う。」

もちろん、英国の「イートン校」を指しているわけです。イートン校は「純紳士」を育てるための学校で、それにふさわしい服装をするのは、当然のことでしょう。

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