シャンソンとシュミーズ

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シャンソンは、フランスの歌謡曲ですね。と、言ったすぐ後で、訂正しなくてはなりません。
「シャンソン」ch ans on はもともと「歌」のことで、歌謡曲と限っているわけでないので。
これは、イタリアの「カンツォーネ」 c anz on e と似ているかも知れませんね。「歌」または「歌う」という意味からはじまっているようです。
まあ、へりくつはさておき。私、シャンソン大好き。たとえば、『ラストダンスは私に』だとか。

🎶 最後のダンスだけは…………………。

なかなか泣かせる曲ですよね。日本では、岩谷時子訳詩、越路吹雪の歌でよく知られています。もちろん、大勢の歌手によっても。
『ラストダンスは私に』が、1960年代のアメリカン・ポップスだったといえば、驚かれるでしょうか。これは、ほんとうの話。
1960年に、ドク・ポーマスと、モルト・シューマンとの合作。原題は、『セイヴ・ザ・ラスト・ダンス・フォー・ミイ』。
ドク・ポーマスは、歌手から作詞家になった人物。ドク・ポーマスの本名は、ジェローム・ソロン・フェルダー。1925年6月27日に生まれています。が、幼い頃から小児マヒで、歩行困難。松葉杖に頼って、ステージに立っていたのです。
松葉杖ですから、踊るに踊れない。だけど、ほんとうは、踊りたい。そんなジェロームの複雑な想いから生まれたのが、『ラストダンスは私に』なのです。
その『ラストダンスは私に』を、越路吹雪が歌ったので、シャンソンとされるようになったものでしょう。
シャンソンが出てくるミステリに、『誰も哀れな男を殺しはしない』があります。ジョルジュ・シムノンが、1947年に発表した物語。
第一、『誰も哀れな男を殺したりしない』の題自体、古いシャンソンからとられているらしい。

誰も哀れな男を殺したりしない………。
二時間のうちに何回となく、このくだらない文句がメグレの頭によみがえってきた。

『誰も哀れな男を殺したりしない』は、こんなふうにはじまるのですね。
また、『誰も哀れな男を殺したりしない』には、こんな描写も。

「入ってきたフランシーヌは体にぴつたり合つた海青色の注文仕立ての服、その下に誂えの白麻のシュミーズを着ていた。」

これは警察署にやって来た、フランシーヌの様子。もちろん、メグレから眺めているわけです。
フランシーヌですから、いうまでもなく女性。でも、この場合の「シュミーズ」は、シャツのことでしょう。あるいは、シャツ・ブラウス。
フランス語の「シュミーズ」ch em is e はシャツに他ならないからです。
とにかく、この時のフランシーヌは、白麻の、注文のシャツを着ていたわけですね。羨ましい。
ぜひ、白麻のシュミーズで、シャンソンを歌いに行きたいものです。

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