シュトレンは、ドイツ菓子ですよね。パンのような菓子といえば良いのでしょうか。
大きなナマコのような形で、これを食べやすい幅に切って、頂く。
st oll en と書いて、「シュトレン」と訓むんだそうです。もともとの意味は、「坑道」で、坑道の形にも似ているので、その名前があるんだそうですね。
シュトレンの中には、レーズン、ナッツ、レモン・ピール、オレンジ・ピールなどが刻んで入っていて、美味しい。そうそう、シュトレン全体には、白く粉砂糖がふりかけられています。
シュトレンはイエス・キリストとも関係があって、キリストの生誕を祝う前に食べる菓子だったという。ちょうどシュトレンを食べ終った時に、クリスマスが来る。そんな印象の菓子だったそうですね。
話変って、ドイツのパンのことなんですが。ドイツには、「シュニッペル」というパンがあって。ごく、ふだんからシュニッペルは食卓に出てくる。
「ヘルミーナの持ってくる熱いコーヒーを飲み香ばしいシュニッペルをかじった。」
寺田寅彦著『コーヒー哲学序説』に出てくる話なんですね。「ヘルミーナ」とは、寺田寅彦がドイツで下宿していた家の女中の名前。
朝になると、寺田寅彦の部屋に、ヘルミーナがコーヒーとシュニッペルを運んで来てくれる。これが、たいそう美味しかったと、寺田寅彦は書いています。
寺田寅彦がドイツに留学するのは、明治四十二年のこと。「ベルリン大学」に入っています。たぶん、その頃の話なんでしょう。
「新聞でも読みながら「ミット」や「オーネ」のコーヒーをちびちびなめながら淡い郷愁を瞞着するのが常習になってしまった。」
寺田寅彦は『コーヒー哲学序説』の中に、そうも書いています。ここでの「ミット」は、英語のウイズ。「オーネ」はウイズアウト。つまり、ミルク入りのコーヒーと、ブラックのコーヒーの意味です。
当時の「ベルリン大学」での授業は、午前中にあって。午後は四時から。この間に寅彦は散歩したり、珈琲を飲んだりして過ごしたらしい。
寺田寅彦の本業は物理学者。物理学者なんですが、随筆の名手。
「夏になったので去年の白靴を出して見ると、かかとのゴムがだいぶすり減っている。」
寺田寅彦は、昭和八年に書いた『試験管』という随筆に、このように書いています。
戦前の紳士は盛夏には「白靴」を履いたものです。「白靴」は布製で、底は革が多かった。布はたいていキャンバス地で、これに白い液を塗ったりしたものです。
たしかに汚れやすい欠点はありましたが、暑い日本の夏には快適だった。
「白靴」、もう一度、復活してくれませんかねえ。