ダービーにも、いろんな意味がありますよね。ファッションのほうで申しますと。ボウラーのことです。
山高帽のことをアメリカで、「ダービー・ハット」。イギリスで、「ボウラー・ハット」。因みにフランスでは、「メロン」。果物のメロンを半分に切った形に似ているので。
でも、どうして同じ山高帽が、「ダービー」と、「ボウラー」と、呼び名が違うのか。結論だけを申しますと。イギリスの「ボウラー」とは区別したかったからなのでしょうね。
「ダービーとは、ややくだけて時にかぶる、ラウンド・クラウンと、ドルセイ・カーヴとが特徴の、フェルト・ハットのことです。」
1870年『ハーパーズ・バザー』11月号には、そのように出ています。
アメリカではじめてダービーが作られたのは、1850年のことと記録されています。が、アメリカではもっぱら「競馬観戦用帽子」という印象があったらしく。ダービー競馬の連想から、「ダービー・ハット」の名称が生まれたものと思われます。
一方、イギリスでのボウラーは、ほんとうの製作者が、ウイリアム・ボウラーだったとの想いが強かったので、「ボウラー・ハット」と称されたのでしょう。
ダービー競馬と関係があるのが、第十四代ダービー伯爵。一時期、英國首相だった人物。ダービー伯爵の直属の部下だったのが、ベンジャミン・ディズレリー。
ベンジャミン・ディズレリーは、作家であり、政治家であり、洒落者でもあった人物。むかし、若き日のディズレリーが、シガレット・カードの絵に描かれたことがあります。
この絵の中でのディズレリーは、黒の、細身の、フロック・コートを。このフロック・コート、よく見ると、脇ダーツが入っているのです。それは1826年に描かれたもので、比較的はやい、「脇ダーツ」の存在でもあったでしょう。
原形は、「ダート」d art で、「投げ矢」の姿に似ているので、その名前があります。
一度、細身のスーツに、ダービーをかぶってみたいものですね。