シャムパンにまつわる話にも数多くあるんでしょうね。たとえば、朝いちばんに飲むシャムパンとか。
フェルナン・ポアンは朝起きるとまずシャムパンを開けることになっていたという。フェルナン・ポアンはフランスの天才料理人。「ラ・ピラミッド」の経営者であり、料理人であった人物。「ラ・ピラミッド」は今や伝説のレストランと言って良いでしょう。
リヨンからもさして遠くはないヴィエンヌのレストラン。「ラ・ピラミッド」、そもそものはじまりは、1923年にアウグスト・ポアンが開いた店。1925年になって、息子のフェルナン・ポアンがあとを継ぐ。1933年にミシュランの三つ星を得る。それ以来、知らぬ者のいない美食の頂点を保ち続ける。ポール・ボキューズもポアンの弟子のひとりとか。
フェルナン・ポアンは朝目が覚めると、シャムパンのマグナムを開け、それを飲みながら仕事をした。
そういえば、「ラ・ピラミッド」の名物料理に、「ひらめの蒸し煮シャムパン風」というのがあったらしい。もしかしたら、フェルナン・ポアン、シャムパンを飲んでいて思いついたのかも。
「ラ・ピラミッド」の来客名簿は、さながら貴顕紳士録のようであった。洒落者で、食通でもあったウインザー公もそのひとり。
「ラ・ピラミッド」には及びもつかないが、美食の出てくるミステリに、『ゴールドフィンガー』が。1959年に、イアン・フレミングが発表した物語。
「昼食は型どおりのえびのカクテルに、小さな紙コップのタルタルソースをそえた名物の鯛、一度プライム・ローストにした牛のバラ肉のソテー……」。
もちろんボンドが友人との食事風景。また、こんな描写も。
「濃紺のトロピカル・ウーステッドの背広を着ると、ネクタイをなおし、ライカの吊紐をカメラが胸にくるように首にかけた。」
もちろんジェイムズ・ボンドの着こなし。さすがに、趣味が良い。トロピカルは読んで字のごとく、盛夏用のスーツ地。
シャムパンを飲むときにも最適でしょう。