薔薇は人気のある花ですよね。だからでもあるのでしょう。よく絵にも描かれて。梅原龍三郎もまた、薔薇を好んで描いています。
梅原龍三郎が好んで食べたのが、キャヴィアとフォアグラだったという。
「パリのオペラ座近くにキャビアだけ食わせる店があってね。ソバ粉を薄く焼いてキャビアを包んで食うのサ。あれは美味かった。ウン。ブリニとかいったかな?」
高峰秀子著『おいしい人間』には、梅原龍三郎の言葉として、そんなふうに紹介されています。たぶん「キャヴィア・カスピア」という店のことでしょう。一階が売店、二階がレストランになっていました。
梅原龍三郎は八十歳を過ぎてから。「キャヴィアとフォアグラはあまり召し上がりませんように」。と、止められる。止められているんですが、到来物はやってくる。お好きだと知ってのキャヴィアとフォアグラが。これを下取りするのが、高峰秀子の役目だったそうです。
キャヴィアはキャヴィアでもレッド・キャヴィアが出てくるミステリに、『ペイパー・ドール』が。ロバート・B・パーカーが、1995年に発表した物語。
「三角のトーストにサケのキャヴィアをのせ、その上にスプーンで生クリームを少しかけた。」
これはスペンサーがスーザンに作ってあげている場面。文中にも「レッド・キャヴィア」とあります。また、こんな描写も。
「かすかなラヴェンダーの細縞の入ったグレイのシルク・ツィード・ジャケット、紺のオックスフォードのボタン・ダウン・シャツにラヴェンダーのニット・タイを結んでいる。」
これはクワークの着こなし。絹糸を使って、トゥイードふうに仕上げた生地のことでしょう。
シルク・トゥイードの服で、キャヴィアを。ちょっと贅沢が過ぎるでしょうか……。