ブランコとフラック

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ブランコは、鞦韆のことですよね。
昔はブランコのことを、鞦韆と言ったんだそうですね。鞦韆と書いて、「しゅうせん」と訓むんだそうですが。

「彼と吾と、郷を同ふし、生年月を同ふし、共に一個鞦韆に乗り、共に同一の小學に學び、共に同一の少女を争ひ……………。l

明治三十三年に、徳冨蘆花が発表した『自然と人生』にも、そのような文章が出てきます。明治の頃には、「鞦韆」がごくふつうに用いられていたのでしょうか。
鞦韆は、ブランコ。また、古語としては、「ゆさわり」とか、「ゆさぶり」の言い方もあったらしい。

「………家へ帰れば紙鳶独楽当。ブランコ球なげ戦事。遊ぶ事に数を盡したが。」

明治二十五年に、巌谷小波が発表した『当世少年気質』にも、ブランコと出てきます。明治期の少年は今の時代よりも、もっとブランコが好きだったのかも知れませんね。

「………麹町ですか麻布ですか、御庭へぶらんこを御こしらえ遊ばせ、西洋間は一つで澤山です……………。」

夏目漱石が、明治三十六年に書いた『坊っちゃん』の、一節にもブランコが出てきます。漱石は、「ぶらんこ」と書いているのですが。
家にブランコがあるといいですね。でも、そのために広い庭が……………。

「…………廣場の木陰には腰掛付の鞦韆なぞも出来ていたが、見渡す限り森閑として人の氣色も無い。」

永井荷風の『あめりか物語』にも、そのように出ています。荷風は「鞦韆」と書いて、「ぶらんこ」のルビを添えているのですが。

ブランコが出てくる小説に、『黄金の壺』があります。1814年に、ホフマンが発表した物語。

「………さあ、いもうとたち ー いもうとたち ー 光をあびてブランコしましょう……………。」

これは主人公の「アンゼルムス」の科白として。また、『黄金の壺』には、こんな描写も出てきます。

「………青灰色の燕尾服に黒繻子のシャツとズボン……………。」

これもまた「アンゼルムス」の装い。ブラック・サテンのズボンは分かりますが、シャツもまた、黒繻子なんでしょうね。
ここでの「燕尾服」は、ドイツ語での、「フラック」fr ac かと思われます。
どなたか1810年代の「フラック」を仕立てて頂けませんでしょうか。

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