フラスクとブリティッシュ・ウォーム

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フラスクは、フラスコのことですよね。
fl ask は、英語。fl asc o は、ポルトガル語。日本には英語の前に、ポルトガル語として入ってきたので、今なお「フラスコ」になじみがあるのかも知れませんね。
フラスクは、入れ物。ことの酒などを入れておく容器のこと。イタリア語の「フィアスコ」
fiasc o とも関係があるらしい。
時に、「ポケット・フラスク」とも。小型で、ポケットに入れておけるフラスコなので。戸外の乗馬などで、寒い時には、これで身体を温めたりしたのでしょう。

「阿蘭陀から来た碧瑠璃色の四角の缶である。酒をながらく容れておいても味は変らず、油を久しく容れておいても漏れない……………。」

寺島良安の江戸期の百科事典『和漢三才図会』には、そのように出ています。寺島良安は、
「布羅須古」と書いて、「フラスコ」のルビを添えています。フラスコのさらに前には、「ふらそこ」の言い方もあったらしい。

「ビールの酒壜は酒氣已に絶えて、今方は冷水のいれものとなりぬ。てんぷらの香なお窓前の竹の皮に殘り……………。」

明治十九年に、坪内逍遥が完成させた『當世書生氣質』に、そのような一節が出てきます。これはとある当時の書生の様子について。前の晩、ビールを飲んで、てんぷらを食べたのでしょうか。
坪内逍遥は、「酒壜」と書いて、「フラスコ」のルビを振っています。

フラスクが出てくるミステリに、『サラマンダーは炎のなかに』があります。2003年に、イギリスのジョン・ル・カレが発表した物語。

「お返しにマンディは、サーシャにクロム製のヒップフラスクを渡す。イギリスで作られ、教授の工房で加工されたフラスク……………。」

エドワード・A・マンディは、物語の主人公。もと、諜報部員だった男と設定されています。
また、『サラマンダーは炎のなかに』には、こんな描写も出てくるのです。

「………イギリス陸軍の厚手のオーバーコートを着て、ヘルムシュテットからベルリンの駐屯地に向かう輸送部隊のトラック後部に乗っている。」

これもマンディの様子として。私の勝手な想像ですが、「ブリティッシュ・ウォーム」ではないでしょうか。
第一次大戦中の、イギリス陸軍将校が着はじめた短外套のこと。ダブル前で肩章付き。ちょっとポロ・コートにも似ている外套のことです。これはブリティッシュ・ウォームを着たままで、馬への乗り降りが楽だったこともあったでしょう。
もともは、「ブリティッシュ・ウォーム・コート」。また、さらに略して「ブリティッシュ・ウォーマー」とも呼ばれたものです。
どなたか完璧なブリティッシュ・ウォームを仕立てて頂けませんでしょうか。

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