タパスは、スペインの小皿料理ですよね。もしも中国なら、「点心」というのに近いかも知れません。
スペインの店によってはタパスは、只というところもあります。ワインを頼んで、ワインの料金だけを支払う勘定なんですね。
昔、一度、イタリアのアルバで同じ体験をしたことがあります。たしか「ヴィン・カフェ」というワイン・バアだった記憶があるのですが。
「ヴィン・カフェ」に入って、ワインを飲ませてもらって。と、そこのカウンターに並べられたおつまみの類いは、無料。しばしば、足を運んだものであります。
昭和三年にスペインを旅した考古学者に、浜田耕作がいます。明治十四年のお生まれ。東大を卒業した後、京大の教授になられたお方。
浜田耕作には、『西斑牙の旅』と題する紀行文があります。
「一時半ごろ博物館を出たわれわれは、アルカラ通りのさる地下室の「セルヴェテリア」すなわちスペイン流の「ビーヤ・ホール」に這入って、簡単な点心を食べて、空腹を医すことにした。」
これはマドリッドでの話として。たぶん、タパスの一種だったのでしょう。
タパスが出てくるミステリに、『海馬を馴らす』があります。1986年に、ロバート・B・パーカーが発表した物語。
「タパス・レストランはポーター・スクェアでは最上であり、レイ・ロビンスンはこれまで最高のボクサーであり………」
余談ではありますが、シャンパンの話も出てきます。
「………テタンジュはフランスで最高級のシャンパンだが………」
また、『海馬を馴らす』には、こんな描写も出てきます。
「革ジャケットに青みがかった〈アレン・ソリイ〉のタタサル模様のシャツにジーンズ………」
これは私立探偵、スペンサー自身の着こなし。自分で自分の服装を褒めている場面として。
ここでの「タタサル」は、私たちがふつう「タッターソール」と呼んでいる格子柄のこと。日本語訳者は、菊池 光。
「タタサル」tattersall の発音は、「タタサル」に近いものです。
1766年に、リチャード・タタサルが、ロンドンにはじめて公設馬市場を開いたことに由来しているので。
英国だろうと日本だろうと、固有名詞の訓み方は難しいものですね。
どなたかタタサル柄のシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。