ステッキとスタッド

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ステッキは、杖のことですよね。ウォーキング・スティックが日本語になって、「ステッキ」。歩行用の杖であります。
このステッキと似て非なるものが、「ケイン」cane なのです。このケインは、純然たる装身具。昔の騎士の劍の代りに携えたものであります。
では、なぜ、紳士はケインを携えるのか。右手をふさいでおくために。紳士は常に「仕事」をしないものですから。
何かを床の上に落としたなら、誰かに拾ってもらう。「私の右手はケインによってふさがれているので」。
そんなわけで、ケインは紳士に不可欠の装身具なのです。

「西洋でいつのころから今のようにステッキが行われ出したものか知らないが、ロココの時代には貴婦人方がリボン附きの長い杖をかついでいる絵がある。」

寺田寅彦が昭和七年に発表した随筆『ステッキ』に、そのような一節が出てきます。

「………壮年の男がお洒落のためにステッキを携え、或いは小脇に、或いは振りながら颯爽と歩く姿は仲々粋なものである。」

團伊玖磨の随筆集『さよならパイプけむり』に、そのように書いてあります。発表は、2000年のことですが。
團伊玖磨はもちろん、作曲家。作曲家であり、また、指揮者でも。指揮者に必要なのが、燕尾服。團伊玖磨は燕尾服についても随筆をお書きになっています。

「烏賊胸のシャツ、立カラー、白タイ、白チョッキ、カフス釦、胸釦、サスペンダー、そして演奏用のエナメル靴。」

團伊玖磨は燕尾服に用意するものとして、例を挙げています。
ここでの「胸釦」は、「スタッド」stud のことでしょう。ひとつの飾りボタンなら、スタッド。これが複数になると、「スタッズ」になります。
スタッドはドレス・シャツが「下着」ではないことを示すための装身具です。
スタッドはだいたいの場合、カフ・リンクスと揃えることになっています。
どなたかボタン型のスタッドを作って頂けませんでしょうか。

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