ビロードとビビ

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ビロードは、ヴェルヴェットのことですよね。velvet と書いて「ヴェルヴェット」と訓みます。フランス語なら、「ヴェルール」veluors でしょうか。
ビロードはもともと輪奈織。銅線を通しておいて糸とともに織る。織った後で輪奈を切り開くと、ビロード特有の毳が生まれるわけですね。
ビロードは十三世紀のフィレンツェで考案されたとの説があります。当時はキャンドルなどの灯りですから、そこに映える布地として発明されたものでしょう。
十四世紀以降、イタリアのそれぞれの港から貴重品として輸出されたと、伝えられています。
日本には十六世紀になって、ポルトガル船がもたらしたものでしょう。ポルトガル語の「ヴェルード」velludoを耳で聞いて、「ビロード」と理解したものと思われます。天鵞絨は、宛字です。天鵞絨と書いて「ビロード」と訓んだのであります。

「………天鵞絨一寸四方、緞子毛貫袋になる程………」

井原西鶴が、1688年に発表した『日本永代蔵』に、そのような一節が出てきます。

ふつう布地は一反二反の単位で、売る。でも、ビロードは高価なので、「一寸四方」からでも売った。そんな内容になっています。

ビロードが出てくる小説に、『ベアトリックス』があります。1839年に、オノレ・ド・バルザックが発表した物語。

「青年はサロンには入らずに、踊り場に置いてある緑のビロード張りのゴチック風ベンチに腰を下した。」

また、『ベアトリックス』には、こんな描写も出てきます。

「また、この帽子の型といえば、二十年後にビビという名前でふたたびパリに流行したものである。」

「ビビ」bibi は、1830年代の巴里で流行った婦人帽。頭にぴったりとかぶる丸い帽子のこと。
どなたか現代版のビビを男にも作って頂けませんでしょうか。

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