ポルトとボト

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ポルトは、ポート・ワインのことですよね。porto と書いて、「ポルト」と訓みます。酒精強化ワインの代表とも言えるでしょう。
ふつうの赤ワインや白ワインのように、栓を開けてすぐに飲まなくても、結構。保存性の高いワインなのです。いつでも、どこでも、ポルト単独でも味わえるワインでもあります。
テイラーにはポルト。そんな決まりはありませんが。テイラーにはポルトが似合います。少なくとも生地の棚の脇にもポルトは置いて置けるでしょう。客が来たなら、まずは一杯のポルトを。ポルトは常温で、ただグラスに注ぐだけで飲めますからね。

ポルトが出てくる小説に、『流星』があります。大正十三年に、富ノ澤麟太郎が発表した短篇。

「遅い夕食を取り、しばらくぶりで口にしたポートワインが、彼をそんな珍しい気持にした。」

ここに「彼」とあるのは、「小汀」という男になっています。大正時代すでに、ポルトを好む男がいたんですね。
また、『流星』にはこんな場面も出てきます。

「思はずその一輪を手折つて、それをボタンホールへ挿した。」

これは「三浦」という人物の様子について。その花とはガーベラだったとも書いてあります。

富ノ澤麟太郎は、早稲田大学で、横光利一と同級だったという。横光利一ははじめて富ノ澤麟太郎に会って、次の日、彼の自宅を訪ねています。会って三時間、横光利一は富ノ澤麟太郎に熱く語った。その間、富ノ澤はひと言も発しなかったと、横光は書いています。

ポルトが出てくる小説に、『獣人』があります。1890年に、フランスの作家、ゾラが書いた長篇。

「セヴリーヌも落ち着きを取りもどし、二人の男たちに笑いかけた。それからみんないっしょに酒を飲み、非常になごやかな一時間を過ごした。」

私は勝手にここでの「酒」はポルトだったろうと考えているのですが。
また、ゾラの『獣人』には、こんな描写も出ています。

「ショートブーツとシャツ六着を買うのに一日かかったなんて言わせないぞ。」

これは「ルボー」の想いとして。
ブーツはフランスなら、「ボト」botte でしょうか。ボトは足頸を包んでくれる靴。温かいものです。
どなたかスリーピース・スーツに似合うボトを作って頂けませんでしょうか。

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