ラズベリーは、キイチゴのことですよね。
raspberry と書いて「ラズベリー」と訓みます。
数多いベリー類のひとつであるのは、言うまでもないでしょう。
ラズベリーの栽培は、十六世紀の英国ではじまったと、考えられています。
ラズベリーは涼しい土地がお気に入りらしい。その意味では林檎にも似ているのでしょうか。
林檎が実をつける場所では、ラズベリーもまた元気に育ってくれる。そんなふうに考えて、間違いではないでしょう。
十五世紀の英語に「ラスピース」raspis (赤ワインの意味)がありまして。ここから、ラズベリーの言い方が生まれたんだとか。
あるいはまた、ラテン語の「ルベール」(赤の意味)から、「ラズベリー」が生まれたとの説もあるのですが。
まあ、ラズベリーの赤い色は印象的ですからね。
でも、ラズベリーには赤ラズベリーも、紫ラズベリーも、黒ラズベリーもあるんだそうですが。
ラズベリーにはヴィタミンCが多く含まれていて。
また目下流行中のポリフェノールもたっぷりと。
さらには、アントシニアンも豊富。目の健康にする果実でもあるのですね。
ラズベリーがたくさんあったなら、ジャムを作ってみたい。パンケーキに添えたり、アイスクリイムのお供にしたり。
ラズベリーが日本にはじめてやって来たのは、明治になってから。英国から北海道に伝えられて。北海道の農場試験場で栽培された歴史があるんだそうですね。
ラズベリーの種類はまことに多くて。赤ラズベリーをひとつとってみても。
「ラーザム」、「カスバート」、「フレミング・ジャイアント」、「セプテンバー」、「ゴールデン・クイーン」、「インデアン・サマー」、「サマー・フェスティバル」などがあるんだそうですね。
1881年のアメリカ、カリフォルニアで、法律家のローガンという人物が、「ローガンベリー」の栽培に成功。これはラズベリーとブラックベリーとの交配による結果。「ローガンベリー」は今も世界中で、流通している果実です。
ラズベリーはふつう「二季成り」。つまり一年に二度実をつけてくれる植物。
六月から七月にかけて、一度実をつける。同じ年の九月から十月にかけて、二度目の実を。要するに、一年に二度の収穫が得られわけですね。
「庭にラズベリーの繁みがありましてね、雪が積もると駒鳥が遊びに来い来いしましたよ」
昭和四年に、宮本百合子が発表した長篇『伸子』にそのような会話が出てきます。
この会話の背景は、当時のニュウヨーク。「水野」という男性が、「伸子」に語っている場面。
余談ではありますが。ここでの「来い来い」は、「きいきい」と訓むのでしょう。
それはともかく、ラズベリーの出てくる日本の小説としては、比較的はやい例でしょう。
ラズベリーが出てくる小説に、『レベッカ』があります。
英国の作家、ダフネ・デュ・ローリアが、1838年に発表した長篇。
「家にもどれば、お茶に採れたてのラズベリーが出てくるだろう。」
イギリスの濃い、美味しいティーに、ラズベリー。合うでしょうね。
『レベッカ』には、こんな描写も。
「昨夜家捜ししていたら古いズボンとストライプのラグビーシャツがでてきたんで、片方の目にアイパッチをして海賊にでもなろうか」。
これは「フランク」の言葉。
ラグビー・シャツragby shirt は、ラグビーに欠かせないユニフォーム。
実に頑丈なシャツ。襟を強く引いたくらいではびくともしません。
どなたかラズベリー色のラグビー・シャツを作って頂けませんでしょうか。