シェフは、チーフのことですよね。
「シェフ」chefe と書くのは、フランス語。
「チーフ」chief と書くのは、英語になります。
シェフもチーフももともとは、「頭」の意味があります。これを「かしら」と訓むと、「長」を指す言葉にもなるのでしょう。
つまりシェフは、「料理長」のことでもあるのですね。
「うんうん唸りながら、苦しんで、苦しみ抜きながら、料理を完成させる。料理というより苦行だ。」
三國清三の随筆『三流シェフ』に、そんな一節が出てきます。
これは「ジラルデ」の厨房の中での様子として。
「ジラルデ」は、スイス随一の名店。
フレディ・ジラルデ経営のレストランのこと。
三國清三は「ジラルデ」で修業したことがあるので。
フレディ・ジラルデは、ポール・ボキューズ、ジョエル・ロブションと並ぶ料理界の巨匠。少なくとも二十世紀を代表する料理人の一人でしょう。
当時の「ジラルデ」は予約を取るのが難しい名店でもありましたね。
出てくるパンも名物のひとつ。小さなパンが、次から次へ、無数に出てきたものです。
『三流シェフ』は、三國清三の謙遜でしょう。三國清三もまた、一流シェフの一人であります。
「あわびがあるんだけど、買ってもらえねえべえか」
小学校二年生の、三國清三の言葉。
三國清三は北海道、るもい、増毛の出身。お父さんは、地元の漁師。
お父さんの得た魚を町に売りに行くのは、三國清三の仕事。
ある時、見事な鮑が採れて。
これはふつうの店にはもったいない。それで三國清三ははじめて、レストランに売りに。
その時、三國清三は思った。「ふーん、世の中には、レストランという商売もあるんだなあ。」
シェフが出てくるミステリに、『祝宴』があります。
2007年に、英国の作家、ディック・フランシスが発表した物語。
「料理に使われた材料についてはすべて熟知している。
その催しゲストとしてではなくシェフとして臨んでいたからである。」
これは、マックス・モアトンの言葉として。
マックス・モアトンは「ヘイ・ネット」のオーナー・シェフという設定になっています。
また、『祝宴』には、こんな描写も出てきます。
「まだシェフコートを着ているが黒と白の格子のズボンは片脚が長く、もう片脚は短くて、その下にブルーのひざ用のサポーターと白いストッキングをはいている。」
これはマックス・モアトンがあることで脚に怪我をしたので。
「黒と白の格子」。私はここから勝手に、「シェパード・プラッド」を想像してしまいました。
「シェパード」chepherd は「羊飼い」のこと。
その昔、羊飼いがこの柄のマントを着ていたので、その名前があります。
1834年に、ディケンズが発表した『ボズのスケッチブック』にも、「シェパード・プラッド」が出てきます。
どなたかシェパード・プラッドの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。