ジェイとシェットランド

ジェイは、人の名前にもありますよね。
ふつうJay と書いて「ジェイ」と訓むことが多いようですが。
たとえば、ジェイ・ギャッツビー。
小説の主人公の名前ですね。
フィッツジェラルドが1925年に発表した
『ザ・グレイト・ギャツビー』の主人公。
『ザ・グレイト・ギャツビー』は、何度も映画化されてもいますから、ご存じの方も少なくないでしょう。
この『ザ・グレイト・ギャツビー』に惚れ抜いた作家が、村上春樹。
村上春樹は当然のように、翻訳もしています。
また、それとは別に機会をとらえては、
『ザ・グレイト・ギャツビー』について熱く語ってもいます。
村上春樹の代表作でもある『ノルウエイの森』を読んでおりますと。

「そして『グレイト・ギャツビイ』はその後ずっと僕にとって最高の小説でありつづけた。」

これは「ワタナベ」の言葉として。
ワタナベが村上春樹の分身であるのは、言うまでもないでしょう。
村上春樹もまた十八歳ではじめて『ザ・グレイト・ギャツビー』を読んでいるのですから。
ひとつの小説に、ここまで熱愛できるのは、なんと幸福なことでしょうか。
『ザ・グレイト・ギャツビー』を読んでおりますと。

「彼女はイヴニング・ドレスを、まるでスポーツ・ウエアみたいに着こなしていた。」

ここでの彼女は、ミス・ベイカーのことなのですが。
「イヴニング・ドレスをまるでスポーツ・ウエアみたいに」。これは最高の褒め言葉。
フィッツジェラルドはファッションの奥義についても詳しかったものと思われます。
フィッツジェラルドが1920年に発表した短篇に、『冬の夢』があります。この中に。もちろんこれまた、
村上春樹訳なのですが。

「人々はシェトランドの長靴下やセーターを出すときには、彼の店に持って行くようにと指示した。」

「彼」とは、デクスターのクリーニング店のこと。
デクスターは高級ウールを縮ませることなく洗うことを学んだので。
村上春樹は「シェトランド」と書いています。これは私たちのいうシェットランドのことなのでしょう。
シェットランドは、シェットランド羊毛のこと。
シェットランド諸島の原産なので、その名前があります。
良質で、素朴な味わいのウール。
一頭から得られる量は少ないのですが、シェットランドならではの土くささが感じられるものです。
どなたかシェットランドで上着を仕立てて頂けませんでしょうか。