デュマとディレッタント

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デュマは、フランスの作家ですよね。アレクサンドル・デュマ。
アレクサンドル・デュマにも、お二人いらして、ともに小説家。これはお父さんと、
息子さんなんですね。それで分かりやすいように、「大デュマ」と「小デュマ」という言い方があったりも。
大デュマは、『三銃士』の作家。小デュマは、『椿姫』の作家。
大デュマは、1802年7月24日に生まれ、1870年12月5日に、世を去っています。晩年の大デュマはなにをしていたのか。せっせと執筆に励んでいて。ただし小説ではなく、
大事典を編んでいたのです。『料理大事典』を。なにしろ大デュマは食通でありましたから。
『料理大事典』は、大デュマ生存中に完成。でも、あまりにも膨大で、すぐに出版されることはありませんでした。デュマの没後三年目、1873年になって『料理大事典』は世に出ています。
このデュマの『料理大事典』は、食に携わる者にとっての聖書にも似た存在でありましょう。ただし『料理大事典』の初版は今日、稀覯本となっているようです。
デュマは、マカロニの茹で方について、イタリアの貴族の屋敷に研究に出かけているとのこと。そのグリロ侯爵家の料理人は、言った。
「茹で方のコツは、ケ・クレスカ・イン・コルポにあります。」
これは要するにいかに「余熱」を利用するのか、との意味であったらしいのですが。
辻 静雄著『料理人の休日』に出ている話なんですが。余談ですが。辻 静雄は幸運にも、
デュマ著『料理大事典』を手に入れることができたとのことです。
辻 静雄著『料理人の休日』には、「ハッピー・ディレッタント」の章も収められています。ここには、辻 静雄の友人が、スイスである老人に会った話が紹介されているのです。
その友人とは料理評論家の、ヴェックスバーグ。ヴェックスバーグにお嬢さんがいて、
ポピー。ある時の避暑中、ポピーはホテルで退屈して絵を描いていた。
そのポピーの横を通りかかった白髪の老紳士が、お父さんに言った。

「好きなように描かせなさい。でも、決して専門学校には通わせないように。」

後で分かったことは、その紳士はマルク・シャガールだった、と。
たとえば、洋服についても理想は、「ハッピー・ディレッタント」かも知れませんね。一流テイラーの客になるのはよろしい。でも、一流テイラーの主人になるのは………。
人間の幸福とは何かを、よく考えてからでも遅くはないでしょう。

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