スプーナーとスーツ

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スプーナーは、人の姓にもありますよね。S p o on er と書いて、「スプーナー」と読むんだそうですが。
スプーナーはもともとは、「スプーンを入れておく箱」の意味でもあったらしい。
姓名としてのスプーナーなら、英國のウイリアム・A・スプーナーが有名でしょう。
ウイリアム・A・スプーナーは、1844年に生まれた聖職者。1930年に世を去っています。
1880年代には、スプーナーはオックスフォード大学、「ニュウ・カレッジ」の学長を勤めた人物でも。
この学識ゆたかなスプーナーはときどき言い間違えをしたという。言い間違えは誰にだったありますよね。
たとえば、ハム・サンドウイッチが食べたいとして、カフェへ。店の人に注文する。
「サム・ハンドウイッチ!」。これが果たして通じるのか、通じないのか。
私の頭の中ではたしかに、「ハム・サンドウイッチ」と言ったつもり。でも、舌のほうでは勝手に、「サム・ハンドウイッチ」と動いてしまった結果なんですね。
1885年頃の、スプーナー師はよくこの間違いが。ご本人はあくまでも「ハム・サンドウイッチ」のつもり。しかし実際の言葉としては、「サム・ハンドウイッチ」に。
これを少し難しく申しますと、「頭音転換」。英語では、「スプーナリズム」。
スプーナー式の言い間違いというわけです。スプーナー師は無意識のうちに発音していたのですが。後に意図的な言い間違いのも。一種の言葉遊びとして。私たちが時にダジャレをいうような感じで、わざと、「頭音転換」を。それもまた「スプーナリズム」。
1900年『グローブ』紙2月5日号にはすでに、「スプーナリズム」の言葉が用いられています。おそらくはその頃から言葉遊びとしての「スプーナリズム」の流行がはじまっているのでしょう。
スプーナリズムが出てくるミステリに、『クイーン検察局』があります。1950年頃に、
エラリイ・クイーンが発表した物語。

「エラリイ、坐りたまえ。クイーンさんにはしゃれた服の裾と角のある牛肉の現金をあげてくれ……………………。」

これはハーヴァード大学の食堂での、ホープ教授の科白。ホープ教授は意識して、スプーナリズムを操っているわけです。
実際には、「フルーツ・カクテル」と、「コーンド・ビーフ・ハッシュ」を注文しているのですが。
頼まれた若い給仕は一瞬とまどうのですが、なんとか通じてしまう場面。
ハーヴァードのマシュウ・アーノルド・ホープ学部長が、どこかでスプーナー師を意識しているのは、間違いないでしょう。
『クイーン検察局』には、こんな描写も出てきます。

大柄な身体をタイト・スーツに包んだラヴェル博士が、いたづらつぽく云つた。

この場合の「タイト・スーツ」はどのくらいタイトだったのでしょうか。
1840年代のラウンジ・ジャケットはそれほどタイトではありませんでした。もともと一般市民の労働服だったから。木を切り、水を運ぶには、ある程度ゆとりが必要。しかし、
1860年代以降だんだんと紳士の服装となってタイトに変化したのです。紳士は、上流階級の紳士は、労働しないのが原則ですから。
ラウンジ・スーツがタイトであるか否かは、労働用であるのかないのかと、関係しているのですね。
どなたか身体に完璧にフィットしたスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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