マジックとトゥイード

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マジックは観ていて、飽きませんね。マジックといえばいいのか、奇術といえばいいのか。昔は、「手妻」と呼んだそうですが。
たとえば、鳩の奇術。燕尾服姿のマジシャンが、どこからともなく、鳩を。もちろん、生きている鳩を。一羽、二羽、三羽……。
専門家の間では、「鳩出し」と言うんだそうですね。映画『ヨーロッパの夜』で、七羽の鳩を出した人が。あれはチャニング・ポロックというマジシャン。
『ヨーロッパの夜』を観たのが、島田晴夫。島田青年、二十歳の時。「それなら、十羽出せないものか」と。島田晴夫、それからというもの。練習に練習を重ねて。とうとう、十羽の鳩出しに、成功。
この話には、続きがありまして。
島田晴夫はその後、世界的なマジシャンに。1960年代末には、かの有名な「マジック・キャッスル」で、公演。さらには。
いつか、『ヨーロッパの夜』で観た、チャニング・ポロックの自宅に招かれるまでに。チャニング・ポロックと仲良しになった島田晴夫は、彼の助手に。
これが縁になって。やがてチャニング・ポロックは、島田晴夫のマネージャーになったという。
ポロックはポロックなんですが。J・C・ポロックは、まるでマジシャンのような小説を書く、アメリカの作家。J・C・ポロックが、2000年に発表したのが、『終極の標的』。この中に。

「黄褐色ツイードに細いブルーの糸が織り込んである完璧な仕立ての上着を着込み、オーダーメイドのシャツは、スポーツ・ジャケットに織り込まれた糸とまったく同じ色調のブルーで……」。

これはCIA の副長官、ジョン・ギャロウエイの、自宅での装い。ここからさらに、えんえんと服の説明が続くんですが。とにかく、凝りに凝った着こなしなんですね。
勝手な想像ですが。このブルーの糸は、シルクかも。
この広い世の中には、そんなマジックのようなトゥイードも、あるんでしょうね。

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