フライと帽子

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フライは美味しいものですよね。たとえば、フライド・ポテトとか。
フライド・ポテトがかならずついてくるのが、「フィッシュ&チップス」。イギリスの郷土料理と言っていいかも知れませんね。
イギリスに生まれ育って、まだ一度もフィッシュ&チップスは食べたことありません。そんな人は、珍しいのではないでしょうか。
イギリスでのつまみ食いにフィッシュ&チップスは、欠かせないもの。ただし必ずしも上品な食べ物ではありません。むりやり日本に置き換えると。学生が学校帰りに、揚げたてのコロッケをぱくつくのに、似ているでしょうか。
フィッシュ&チップスも揚げたてを食べるところに、命があります。
ロンドンでフィッシュ&チップスが出回るようになったのは、1860年ころのことなんだそうですね。これは魚の採り方の変化と関係しているんだとか。
1860年ころ、採った魚を氷詰めにして持ち帰ることがはじまる。それで、遠く北海の魚を新鮮なまま、ロンドンに届けられるようになるんですね。
たとえば鱈などは白身で、淡白で、でもフライにすると、上手い。そんなことから、フィッシュ&チップスが広く流行するようになったのでしょう。
フィッシュ&チップスは「伝統的」に、新聞紙に包んで、食べる。イギリス人は、なに新聞紙に包むかによって、その中のフィッシュ&チップスの味が微妙に変化するのだと、信じて疑わない。
フィッシュ&チップスは今はたいてい、ピーナッツ油で揚げる。でも、昔のフィッシュ&チップスは必ずラードで揚げたんだそうですね。
フィッシュ&チップスが出てくるミステリに、『真夜中への挨拶』があります。レジナルド・ヒルが、2004年に発表した物語。

「事務所の二軒先に中国人のやってるフィッシュ&チップス屋があるだろ。」

これは、英国、ヨークシャー警察のジェイソン巡査が、フィッシュ&チップスを買ってきた場面。
ひとつの袋には「ハドック」が、もうひとつには「コッド」が、入っている。これから車の中で、フィッシュ&チップスを食べようとする。
そしてひとつの新聞紙が「デイリー・メイル」で、もうひとつの新聞紙が「ガーディアン」だと、ちゃんと書いてあります。また、こんな描写も。

「こちらは黒檀製で、鷹の頭をかたどった銀の握りがついている。黒いトリルビーをかぶっていたが、「おはようございます、ミス・マック」 」

これは、ローレンス・ウェイヴァリーという紳士の姿。それを物語の主人公で、ヨークシャー警察の、ダジール警視が眺めている場面なんですね。
さて、なにか帽子を被って。美味しいフライを食べに行くとしましょうか。

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