ハムレットは、有名ですよね。もちろん、シェイクピアの戯曲。
1600年ころの執筆ではないかと考えられているですが。『ハムレット』には名科白がいっぱいあって。
たとえば、「トゥ・ビイ・オア・ノット・トゥ・ビイ」とか。これは翻訳家泣かせなんですってね。どんな風にも訳せるので。というよりも、シェイクピアはそれだけ多くの含みをひとつ言葉に秘めたんでしょう。
この『ハムレット』の中に。「ノース・ノース・ウエスト……」の言葉が出てくる。これもハムレットの科白。
映画『北北西に進路を取れ』は、このハムレットの科白から想を得ているのでは、との説があります。1959年の名画『北北西に進路を取れ』の原題は、『ノース・バイ・ノースウエスト』。というのも「ノース・バイ・ノースウエスト」の表現は、この映画での独創なんですね。
1959年はなぜか名画がたくさんの年。『黒いオルフェ』。『勝手にしやがれ」』。『情事』。『お熱いのがお好き』。『ベン・ハー』。『アンネの日記』………。
1959年。小津安二郎は何をしていたのか。昭和三十四年。小津安二郎は、芸術院会員賞を受けています。
「のち田園調布にてモーニングに着換へて……」
昭和三十四年五月二十七日の日記にそう書いています。「田園調布」は、俳優、佐田啓二の自宅でしょう。
小津安二郎はすでにモーニングは持っていた。でも、この日のために新調したようです。それを仕立てのが、赤坂にあった「細野洋服店」。小津安二郎にとってのモーニングは一期一会だったのかも知れませんね。
モーニングを着るのは夢物語として。ハムレットの古い本を探しに行くとしましょうか。