写真家が主人公となる映画に、『裏窓』がありますよね。
写真家の名前は、ハル・ジェフリーズ。脚を怪我して動けないという設定。その恋人役が、グレース・ケリー。ファッション・デザイナーの、リザ・クレモントの役を演じています。ジェフリーズは毎日、退屈で退屈で。窓の外ばかり眺めているうちに………。
これは、名画ですね。1954年の、ヒッチコック映画。原題は、『リア・ウインドー』。写真家、ジェフリーズに扮するのが、ジェイムズ・スチュアート。名演です。
原作は、ウイリアム・アイリッシュ。NYのサスペンス物では、第一人者。『リア・ウインドー』は、1942年の発表。『ダイム・ディテクティヴ』誌2月号に掲載されています。『リア・ウインドー』の原稿料、225ドルだったと伝えられています。1941年頃の225ドル。今の、どのくらいなんでしょうか。
『裏窓』の、1954年はなぜか名画の当たり年でもあって。エリア・カザンの『波止場』。ベネディックの『乱暴者』。日本映画では、『雨月物語』、『七人の侍』………。
1954年にアメリカを旅したお方に、小泉信三が。まず、ハワイに寄ってから、ロスへ。ロスでは、「スタトラー・ホテル」に泊まっています。その時の手紙に。
「部屋にはテレビあり、ラジオあり、探偵小説の備付二冊あり………」
と、書かれています。まさか『リア・ウインドー』ではなかったでしょうが。とにかく小泉信三は、そのホテルの心配りに感動しているんですね。その日付は五月十七日になっています。また、こんな一節も。
「それから扉にしかけがあって、そこへ洋服を入れて置くとプレッスして、返して、入れておいてくれる………」
なるほど。そういう「しかけ」もあったんですね。スーツにプレスは欠かせませんから、ありがたいものです。