シネマと縞ズボン

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シネマは、映画のことですよね。「シネマ」はまたサンローランの香水の名前でもあります。
シネマということもあれば、キネマとも。『キネマ旬報』という映画雑誌があるように。
昔の日本人は耳が敏感で、しかも縁起をかついだ。明治になってシネマが入って来たとき、「死ねま」と解した。「死ねま」は縁起が悪い。で、「キネマ」なったという話を聞いたことがあります。
似たような話がもうひとつあって、「マネキン」。フランスから「マヌカン」 mannequinがやってきた時。「招かん」では具合が悪い。それで、「マネキン」の言葉が生まれたんだそうですね。
アメリカでは「シネマ」とも、「ムービー」とも。どちらかと言えば、「シネマ」は芸術映画に対して。「ムービー」は、娯楽映画に対して。そんな傾向があるみたいですね。
一方、フランスでは「フィルム」ということが多いらしい。「映画」は「フィルム」。「シネマ」は「映画館」。そんな感じなんだとか。
シネマで贅沢といえば、自宅で映写機とスクリーンを用意して、フィルムを回すことでしょうか。時代錯誤といえばそれまでのことではありますが。
その昔、「映画会」を自宅で開いたのが、三島由紀夫。映画の題は、『臍と原爆』。監督は、写真家の細江英公。澁澤龍彦著『三島由紀夫おぼえがき』に出ています。その「映画会」は、昭和三十七年の夏のことであったという。
それとは別に、三島由紀夫の自宅で、ダンスパーティーも。澁澤龍彦は、昭和三十五年八月七日と、書いています。その時の服装。「アロハ・シャツのこと」と、案内状にあったそうですが。
三島由紀夫が昭和三十年に発表したのが、『女神』。この中に。

「誕生石のネクタイ・ピンをつけた渋いネクタイに、黒の上着と縞ズボンという十九世紀の伊達男の いでたちで…………」。

これは主人公、朝子の父、木宮周伍の着こなし。
縞ズボンは、もっと気楽に穿きたいものですね。

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