ボタンは大切な小道具ですよね。ボタンひとつでそのふkの印象が一変することがあります。
昔むかし、ボタンで恥ずかしい思いをしたことがあります。子供のころ、近くのお姉さんたちが、流行歌を歌っていた。
♬ バッテンボー…………。
これを耳にして ♬ バッテンボー………。なにか九州の男の子の名前かと。「ばってん坊」とか。
少し大人になってから、それは『ボタンズ・アンド・ボウズ』という歌詞であることに気づいたから。
ボブ・ホープ主演の、【腰抜け二丁拳銃』の主題歌だったのですね。余談ながら、「バッテンボー」はその年のアカデミー音楽賞を受けています。
ボタンはまた、ゲームに使われることも。「ファン=タン」。たいていは白い貝ボタンが使われるようですが。山盛りの貝ボタンと、お椀とを用意して。お椀の中にボタンを入れて、伏せて、置く。
これをジャンケンで、四個づつ、ボタンを取ってゆく。で、最後に残ったボタンの数を当てるゲーム。3個、2個、1個、ゼロ。その数を当てての、お遊び。
「ファン=タン」は、1928年のサンフランシスコでもずいぶんと、流行ったみたいですね。どうしてそんなことが言えるのか。ジョー・ゴアーズ著『ハメット』にも、それが出てくるので。『ハメット』は、1975年の発表。ただしその背景は、1928年のサンフランシスコに置かれているのです。
「パイ・ゴウでもなくドゥ・ファーでもなく、ファン=タンであることをしめしていた。」
これはダシール・ハメットが調査のために、サンフランシスコの中華街を歩いている場面なんですね。『ハメット』はその名の通り、ハメット自身が探偵役となるミステリ。では、ハメットは何を着ているのか。
「グレイの千鳥格子の上着は三つボタン、チャコール・グレイのズボンには手の切れそうな折り目がついている。」
うーん。1928年のサンフランシスコで、ハメットは千鳥格子のジャケットを着ていたのですね。
1934年に。ハメットは『影なき男』を出版。この『影なき男』の表紙は、ハメット自身の全身像が。当時、ハメットはそのくらいには、洒落者で通っていたのです。そのハメットが、千鳥格子をお気に入りだったのでしょう。