スペインとスウェード

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スペインは、美味しいものがたくさんある国ですよね。
たとえば、ハモン・セラーノ。スペイン産の生ハム。「ハモン・セラーノ」を直訳すれば、「山のハム」。むかしは山で造られたのでしょうか。
ハモン・セラーノを、紙より薄く切って食べると、いくらでも…………。
スペインに旅した日本人作家に、立原正秋がいます。立原正秋がいわば「スペインみやげ」として書いた小説に、『帰路』があって。『帰路』の中に主人公の「大類」が、マドリッドで食事をする場面が出てきます。

「豚の内臓にパプリカ、大蒜、月桂樹の葉をいれて白葡萄酒で煮込んだのは如何かな」

もちろんこれは「大類」の言葉。まあ、「スペイン風モツ煮込み」でしょうか。小説の主人公だけでなく、立原正秋自身、すっかりお気に召したようですね。行く所行く所で、「スペイン風モツ煮込み」を堪能したという。
いや、そればかりか。日本に帰ってからも、よくご自分で「スペイン風モツ煮込み」を作ったらしい。
モツを塊で買って来て、大鍋で、下茹で。次に、白ワインと、ハーブを加えて、とろ火でゆっくり煮込んで、完成。これにバジリコ・ソースをかけて食べたんだそうです。
立原正秋の短篇に、『七号室』があります。この中に。

「女は受付のカウンターに黒いスエードのハンドバッグをおくと……………」。

スウェードは、裏革仕上げのことですね。靴や帽子、服にも多く使われるものです。昔、スウェーデン産の極上手袋の材質だったところから、フランスで「スウェード」と呼んだのがはじまりなんだとか。
スウェードが出てくるミステリに、『選ばれた者』があります。1966年に、リース・デイヴィスが発表した物語。

「緑いろのスエードでできたこのジャンパーに、一週間分以上の賃金がふっとんだのであった。」

街で、いちばんの洋品店でスウェードのブルゾンを買ったので。
濃いグリーンの、スウェードのブルゾンで。「スペイン風モツ煮込み」を食べに行きたいものではありませんか。

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