ポップコーンは、美味しいものですよね。ただし、食べはじめると、終わりということがありませんが。
ポップコーン popcorn を直訳するなら、「はじけトウモロコシ」でしょうか。要するにトウモロコシをどうやって食べるのか、という問題でもあって。札幌に行きますと、「焼きトウモロコシ」を売っています。焼くには焼くんですが。粒にしてから鍋で焼くと、ポップコーンになるわけですね。
古代人はもっと原始的なやり方で。焚火の中にトウモロコシの粒を投げ入れる。と、はじけて、飛びだしてくる。それをキャッチした、食べたんだそうですね。
ちょっと凝ったポップコーンひとつに、「メープル・ベーコン」があります。これは、オーヴンで作るポップコーン。まずベーコンをカリカリに炒めて。その脂で、コーンを焼いて。最後にメープル・シロップを絡めて食すわけであります。
横尾忠則の絵をポップコーンに見立てたのが、三島由紀夫。
「或るフワフワした、桃いろの、ポップ・コーンのようでもあり、ゴム風船のようでもあり…………」。
『ポップコーンの心霊術』と題して、そのように書いています。ポップコーンが出てくるミステリに、『盗まれた貴婦人』があります。2010年に、ロバート・B・パーカーが発表した物語。
「あなたの犬を行儀よくさせて。あのポップコーンはハトにやったのよ」
これは、ある日曜日の午前十時。ボストンの公園での出来事。豹柄のコートを着たマダムが、スーザンに言う科白。スーザンの愛犬「パール」が、そのポップコーンを食べたので。
どこから眺めても、あまりにもあまりにもアメリカ的な光景ですね。
『盗まれた貴婦人』の中には、こんな描写も。
「プリンスはグレイのツイードのスーツに、ポルカドットの蝶ネクタイという恰好だった。」
アシュトン・プリンスは、ウォルフォード大学の教授という設定。
ポルカ・ドットは、ネクタイの柄としては中くらいの大きさのもの。ポルカ・ドットの由来はよく分かってはいません。笑は勝手に、ポルカのダンスの様子と関係していると、思っています。ポルカ・ダンスを踊っている光景を上から眺めていると。お嬢さん方のドレスの裾が丸く拡がって…………。
ポルカ・ドットのボウ・タイを結んで。ポップコーンを食べるのは許されるでありましょうか。