薔薇とハンカチ

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薔薇は、心惹かれる花ですよね。薔薇は、ローズ。あるいはまた、「ローザ」とも。「ロザリンド」は、美女の名前でもあります。
中世ので伝説によれば。罪なき美少女が、火あぶりの刑に処せられて。その焦土から生まれた花が、今の薔薇であるという。
薔薇は姿形が美しいだけでなく、その薫りもまた美しい。古代から広くヨーロッパで薔薇が愛された理由の一つに、薫りがあります。「薔薇香水」を得るために。今日のアルコールによるパルファン以前には、花のエキスを閉じ込めて、香水としたから。
「薔薇香水」の原料となったのが、「ローザ・ガリカ」の品種だったと伝えられています。この「ローザ・ガリカ」がお好きだったのが、ジョセフィーヌ。ナポレオン妃、ジョセフィーヌは薔薇を愛し、多くの薔薇品種を集めた。「ローザ・ガリカ」だけで、167品種の薔薇を持っていたそうです。
川端康成の短篇に、『薔薇の幽霊』があります。『薔薇の幽霊』から生まれた小説が、後の『薔薇の家』なのです。川端康成もまた、薔薇を愛したおひとりなのでしょう。

「家のぐるりは、すっかり薔薇じゃありませんか。」

とある村の、とある家の様子。すべてが薔薇に包まれているのです。
川端康成の長篇に、『女であること』があります。この中に。

「一枚七百圓もするロオンのレエスのまで、どれも五寸四方ほどの、女持ちのハンカチイフが、長いショウ・ケエスのなかにならんでゐる。」

『女であること』は、昭和三十一年の発表。昭和三十一年の「七百圓」は、今のどれくらいなのでしょうか。
「ロオン」はなにもハンカチだけとは限りません。ローンのシャツもあります。この上なく繊細なシャツではありますが。
でも、その前に、お気に入りのハンカチを一枚用意しておきたいものですが。たとえば、白薔薇でもあるかのようなハンカチを。

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