カプチーノは、美味しいですよね。フランスの朝にカフェ・オ・レが欠かせないように、イタリアの朝には、カプチーノが欠かせないようです。ちょうど昔日本の朝に味噌汁が不可欠であったのに似て。
カプチーノはミルクの泡が魅力で。濃い、上等のミルクを泡立てて、蓋をする。その蓋である泡ミルクと、エスプレッソの間からそっと、飲む。と、ミルクのような、コーヒーのような、その混じり合いのような液体が流れこんできて。これはカプチーノならではの醍醐味でありましょう。
「カプチーノ」cappccino は、カプチン会の修道士の僧服からきているとの、説もあるようです。僧服自体はブラウンで、これに白いフードが付く。その様子に見立てて、「カプチーノ」なんだとか。
カプチーノが題につく短篇に、『カプチーノを二つ』があります。1970年代に、デヴィッド・アップダイクが発表した物語。デヴィッド・アップダイク自身は、アメリカ人。というよりも、ジョン・アップダイクの長男。でも、『カプチーノを二つ』の背景はイタリアになっています。アンナとマイケルの二人がイタリア各地を旅する物語。
「 「ドゥエ・カプチーニ!」老婆はまだくりかえしていた。」
カプチーノが二つだから、「ドゥエ・カプチーニ」になるのでしょうね。二つなので、複数形に。『カプチーノを二つ』は、物語の終わりのところで。マイケルがコーヒーの匂いから、「子供のころ」思い出す場面があります。まあ、それほどに香りは記憶と結びついているのかも知れませんね。
ところで、カプチン会が出てくる物語に、『即興詩人』があります。『即興詩人』は言うまでもなく、アンデルセンの作品。これをドイツ語から日本語に移したのが、森 鷗外。森 鷗外の『即興詩人』は、明治三十五年に出版されています。森 鷗外は『即興詩人』の翻訳にほぼ十年を費やしています。明治以降、もっとも美しい文章ともいわれているものです。
「我は此の日 よりカツプチヨオの寺にゆきてちごとなり……………」
たぶん「カプチン会」が紹介されたはやい例かと思われます。また、『即興詩人』には、こんな描写も。
「身に着けたるものとては、薄きじゆばん一枚、鞣革の袴一つなるが…………」。
ここでの「じゆばん」は、シャツのことかと思われます。また、「鞣革の袴」は、レザー・トラウザーズでしょうか。
まるでビロードのような革ズボンを穿いてみたいものですね。もちろん朝、カフェにカプチーノを飲みに行くにも最適でしょう。