イギリスとイリデッセント

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イギリスでの美味しいものに、ローストビーフがありますよね。ローストビーフの外側がしっかり焼けていて、中がピンク色というのが最上とされるんだそうです。
ローストビーフの歴史も古いらしい。少なくとも十七世紀にはローストビーフが存在していたという。十七世紀のローストビーフは、多く日曜日の朝に焼いた。で、それを昼間に食べた。
牛一頭を丸焼きにするのですから、一日では食べきれない。で、一週間かけて、いろんな調理法で、食べた。それでまた日曜日がくると、一頭の牛を丸焼きに。これをえんえんと繰り返してきたわけですね。
では、どうやって一頭の牛を丸焼きにしたのか。犬を使って、焼いた。ちょうどダックスフンドのような犬を丸い籠に入れる。で、この丸い籠の中で犬を走らせて、回転させる。この籠に串焼きの棒をくくりつけてあるから、軸が、牛が回転。ざっとそんな仕掛けになっていたんだそうです。
この「焼犬」のことを、「ターンスピット・ドッグ」と呼んだとのこと。ここのところを短く申しますと。昔の英國では、犬が牛を調理した、そうも言えるのでしょう。
イギリスで美味しいものがもうひとつあります。朝食。イングリッシュ・ブレックファースト。美味しいという以前に、量がしっかりとあります。あれは昔、朝食後に大いに働く必要があったからとか。今のイギリス人だれもが、あのイングリッシュ・ブレックファーストを召し上がっているわけでもないようです。いわば外人観光客用という一面もあるんだとか。
イングリッシュ・ブレックファーストが出てくる小説に、『踊り子の死』があります。ジル・マゴーンが、1989年に発表した物語。

「 「やあ。もう起きたのかい? 」 しゃべりながらマイケルはイギリス風の朝食をたっぷり皿に盛った。」

マイケル・ヒルは、ジュディ・ヒルのご主人という設定。ジュディ・ヒルは部長刑事。
『踊り子の死』には、こんな描写も出てきます。

「本体は濃紺のヴェルヴェット地で、襟とポケットの垂れ蓋は明るい青の玉虫色のシルクだった。」

これは英語教師のフィリップが着ているディナー・ジャケットの説明。
「玉虫色のシルク」は、たぶん「イリデッセント」なのでしょう。たとえば緯糸にブルー、縦糸にグリーンを配して織ると。見る角度によって、ブルーが強く想えたり、あるいはまた、グリーンが濃く出たり。それが、「イリデッセント」。もちろん、シャツなら、イングリッシュ・ブレックファーストにも着たいものですが。

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