ネクタイとネップ

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ネクタイは頸に結ぶものですよね。男ならたいてい一本は持っている小道具でしょう。このネクタイを題にに随筆を書いたお方に、永井龍男がいます。
永井龍男は名文の名手で、今読んでも時代を感じさせないのは、さすがでありましょう。第一、肩に力が入っていない。寛いで、お書きになっている。それで読ませてしまうのですから、名人というほかありません。
『ネクタイの幅』がその題名。永井龍男がある人からフランス製のネクタイを贈られる話。永井龍男がそのフランス製のネクタイを結んでみると、長い。で、ネクタイの端をズボンにしまったという。
実は、これ、正しいやり方なんですね。
『ネクタイの幅』の最後に、「宗匠帽」の話が。永井龍男が家の近くを散歩していて友人に出会う。友人はなんとも粋な宗匠帽をかぶっていて。永井龍男は当然、その宗匠帽を褒める。
その友人は、大佛次郎からズボンを頂いた。大佛次郎は背が高いので、友人には裾が余る。余った裾で宗匠帽にしたら、これがぴったりだった、と。なにごとも余り物には福があるとか申しますが。
ネクタイが出てくる小説に、『青い蝶の刺青』があります。1997年に、ローレンス・サンダーズが発表した物語。

「淡い藤色のストライプのシャツ、大きく広がった白い襟には黒の編んだシルクのネクタイを締めている。」

これは、ヘクターという人物の着こなし。それを眺めているのは主人公の、アーチボルド・マクナリーという秘密調査員という設定。では、アーチボルトのお父さんは、どんな服装なのか。

「ネップヤーンのチェビオットのダブルの三揃いを着ている。」

プレスコット・マクナリーは有名な弁護士。もちろんチェヴィオット・トゥイードのスリーピース・スーツなんですね。
「ネップ」は、「節糸」のこと。手紡ぎなので、自然の節糸があらわれる。節糸のままに織り込むので、生地の表にあらわれるわけです。チェヴィオット・トゥイードの特徴のひとつでもあります。
チェヴィオット・トゥイードの、ダブルの、スリーピース・スーツ。さて、どんなネクタイを合わせましょうか。

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