ハミングということがありますよね。「鼻歌」ともいえば良いのでしょうか。
まったく思ってもいなかった十万円が、突然に入ってきて。そんな時には知らないうちにハミングを口ずさんでいたりするものです。
ハミング h umm ing は、ハム h um という擬音から出ているんだとか。「ブーン」という時の擬音。ハチドリのことを、「ハミング ・バード」と呼ぶのもそれと関係しているのかも知れませんが。
丸谷才一著『笹まくら』に、ハミングが出てきます。
「家庭で温泉を楽しめるという能書の薬のコマーシャル・ソングをハミングで歌いながら………………。」
これは「陽子」という女性の様子なんですね。丸谷才一は文豪で、なんとなく緊張して向かうのですが。「ハミング」にふれて、肩の力が抜けました。「ハミング」の力には大きいものがあります。
ハミングが出てくる小説に、『ある記憶』があります『ある記憶』は、1941年に、ユードラ・ウェルティーが発表した長編。少女の頃の想い出を綴った内容になっています。
「なにかの歌をハミングしつづけ、ほかの者にうるさがられようとしているようだった。」
これは少女がひそかに想いを寄せている少年の姿。まあ、そういうこともあるのでしょうね。
『ある記憶』には、こんな描写も。
「いまでも彼が着ていたセーターの編み目の不揃いさや、色あせたブルーの正確な色合いを正確に再現することができる。」
これはたぶん手編みのスェーターなのでしょう。ハンド・ニット。やはり手の仕事には人の温もりが籠っていますよね。