ノクターンは、夜想曲のことなんだそうですね。夜に想う曲なのか。夜を想う曲なのか。
ノクターンといえば、ショパンでしょうか。たとえば、1832年に、『ノクターン 変ロ短調・作品九の一』を発表しています。これは、マリイ・プレイエルに捧げられています。プレイエルはあのピアノの「プレイエル」で、その奥方。それはそれはお美しいお方だったという。
ショパンの前にノクターンを作曲したのが、英國の、ジョン・フィールド。ショパンはこのジョン・フィールドにふれてノクターンを創ったという。
「ノクターン」と名づけられた小説に、『チリ夜想曲』があります。2000年に、ロベルト・ボラーニョが発表した物語。この中に。
「解読しようとはおもわなかったが、その意味がなぜか気になって仕方がなかった記号のついたネクタイピンを…………………。」
これは、フェアウェルという紳士の身に着けているネクタイピンのこと。では、フェアウェルはどのような着こなしなのか。
「英国製の上等なグレーのウール地の三つ揃い、オーダーメイドの靴、シルクのネクタイ、わたし自身の夢想のように一点の染みもないワイシャツ……………。」
そこにヘッドが「記号」になったネクタイピンを挿しているわけですね。その「記号」は、たぶん夜想曲の音符だったのでしょう。