新橋と紳士

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新橋は、東京の、大きな街のことですよね。ごくおおまかにいえば、銀座と虎ノ門の間でしょうか。
新しい橋と書いて、新橋。でも、きのうきょうにできた橋ではありません。古い地名なのに、新橋。もっともこれにも前例がありまして、パリのポンヌフ。ポンヌフは、「新橋」の意味なんだとか。でも、実際にはパリでいちばん古い橋ということになっています。
♪ 汽笛一声新橋を………………。
『鉄道唱歌』にも歌われる通り、鉄道のもっとも古い駅でもあります。今も遺っている汐留駅が、むかしの新橋駅だったのです。
新橋で想い出す人に、梅田晴夫がいます。梅田晴夫。まあ、奇人と言って良い人でありました。骨董品を蒐めるのが趣味で、あまりに蒐まりすぎたので、骨董品屋を開いていた時期があります。暇な私はそれを聞いて、新橋の梅田晴夫の店に行ったことがあります。
梅田晴夫は、骨董品の山の中に、ひとりでぽつんと座っていました。梅田晴夫の著作のひとつに、『紳士のライセンス』があります。これはほんの一例で、「紳士」のことばかり考えていたのは、梅田晴夫くらいのものではないでしょうか。
『紳士のライセンス』の中には、「飲む、打つ、買う、拾う」と出ています。飲むは、酒と珈琲。打つは、競馬。買うは、紳士服。拾うは、骨董品。これこそ「紳士」の嗜みだと。
梅田晴夫の立派なところは、この「飲む、打つ、買う、拾う」を、ご自分で実践なさったことであります。

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