皇帝液は要するに、ドリンク剤のことですよね。茶色い小瓶に入っていて、これをひと口飲みますと、たちまち元気百倍。
皇帝液を深く信頼していたおひとりが、北 杜夫。北 杜夫の随筆『カラコルムふたたび』には、そのように出ています。
「昨年から私はこの栄養剤が癖となり、そのおかげで鬱期をも比較的軽く乗り越えたと信じていた。」
皇帝液を信じる北 杜夫は「遺伝」かも知れません。北 杜夫のお父さんは「鰻信仰」があったらしい。鰻をひと口食べると、元気百倍。北 杜夫のお父さんは、斎藤茂吉。斎藤茂吉もまた、詩人である前に医者でもあったのですが。
でも、どうしてここに皇帝液の話が出てくるのか。二十六年ぶりに、カラコルムに登ることになったので。北 杜夫は1965年、付き添いの医者として、カラコルムに登った。そのことを知ったTV局が、「番組に出て欲しい」。それを言うほうもなんですが、受ける北 杜夫もなかなかの人物でありましょう。
この「カラコルムふたたび」のために大量に皇帝液を用意したという話なのですが。『カラコルムふたたび』の中に。
「私は記念のため、未だに当時の高所服などを保存している。」
もちろん1965年にカラコルムを登った時の服なのですね。高所服。具体的には、ダウンを詰めた登山服だったと思われます。たとえば零下二十度の高山でも耐えられるような。もう、そうなるとダウンをいっぱい詰めた服しか考えられないのでしょうね。
皇帝液は元気になれるし、高所服は暖かさを与えてくれます。